【コラム】山内雄司

ザックが選んだ23人に誇り 「世界を打ち負かす」サッカーでサプライズを

[ 2014年5月17日 05:30 ]

W杯日本代表メンバー発表会見で厳しい表情のザッケローニ監督
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 ワールドカップに臨む日本代表選手23人が5月12日に発表された。このメンバーについて、様々な意見、もちろん批判もあるだろうが、個人的にはザッケローニ監督の信念が表れた、納得のいくものであった。サプライズとされた大久保の選出も、理に適ったものと言える。ワントップとしても、サイドに置いても得点を期待できる。岡崎、香川に代わる存在としては清武がおり、しかしここは少しばかり手薄に思えた。そこで最前線でDFを出し抜くのみならず、切り込むことも、ミドルもある大久保に白羽の矢を立てた。豊田、ハーフナーの高さより、あくまでもパス交換、スピードある飛び出しによる切り崩しを求めた。ジョーカーの齋藤と合わせて、より高く、よりゴールに近く、という強い意識が見て取れる。これは推測だが、大久保というピースを当てはめたことで、むしろ中村憲の選出は難しくなったのかもしれない。

 このチームの中心は紛れもなく本田であり、香川、岡崎、そして内田、長友がこれに呼応する。クラブで苦境が続いていたとしても、本田、さらには香川に対して「メンツは揃えた。お前らが日本のサッカーを具現化するんだ。託したぞ!」というメッセージを込めた選出とみる。中村の力量、特性も十分に理解した上で、大久保とのセットで、との指摘、要望も承知の上で、考えに考え抜いた結果が、今回の発表となった。それは、中村が予備登録メンバーに選ばれたことからも推察される。指揮官は自らが作り上げてきたチームを重視した。大久保と中村をセットで、という考え方ではなく、信念、コンセプトに則り、様々な状況をひとつずつ精査した。中村に不足があったわけでもない。実力以外の要素が、時に非情な事象を生む。誰かを選べば誰かが外れる。限定された人数を選ぶ作業は、それ自体が非情であるということだ。

 個人的には大久保の選出以上にサプライズだった細貝のメンバー漏れも、状況が少しでも違っていたら、という話になる。内田、長谷部の回復具合を逐一スタッフから報告を受けて、ピッチに立ち、しっかりとしたパフォーマンスが見込める目処は立った。仮にそうでなかったら、細貝のチョイスを迷う要因にはならなかったはずだし、前の誰かが異なっていたら、また変わっていたかもしれない。青山か細貝か、という二者の選択ではなく、そこにも多くの要素が含まれる。

 間違いなく言えるのは、かつてないほどのタレントが凌ぎを削った今回ほど厳しい選考はなかったということ。そんな中でブレずに重要な決断をした指揮官に敬意を表したい。かくいう私は昨年の欧州遠征までは『闘莉王は絶対に必要』『監督を更迭すべき』と書いてきた。しかし、今となっては個人的な思いは抜きにして、ザッケローニ監督が選んだ23人に誇りを持ち、彼らを信じて期待する。“変節”した一介のライターが望むのは、これまでのような「世界を驚かす」から、「世界を打ち負かす」サッカーを見せようじゃないか、ということ。言われるまでもなく、選手たちは自分たちを信じて戦い抜いてくれることだろう。

 最後に付け加えたい。ここに取り上げた中村や豊田、細貝のみならず、当落線上にあったとされる選手、さらにはそれこそ数え切れないほどの選手たちがブラジル行きを賭けて、気高く誇り高い姿勢を見せてくれた。メンバー入りを逃した喪失感、悔しさが幾ばくのものかを知る由もなく、かける言葉も不要だろうが、ここに心からの敬意と賛辞を贈らさせて頂きたい。本当に熱く、崇高な戦いだった。本大会はこれからだが、その面では我々はすでにワールドカップを存分に楽しませてもらっている。大いに感謝しつつ、今後のサッカー人生も悔いなきよう存分に駆け続けて欲しい。(山内雄司=スポーツライター)

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