【コラム】山内雄司

ACLソウル―広島 不可解なPK判定 サッカーの魅力が損なわれる ビデオ判定の導入を

[ 2014年4月3日 05:30 ]

?FCソウル・広島?試合後、審判団に詰め寄る広島・石原(中央)、千葉(左から3人目)ら
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 4月1日に行われたACL・1次リーグ第4節、FCソウル―広島戦は実に後味の悪いものとなった。広島の1点リードで迎えた後半の終盤、疑問符を付けざるを得ない二度の笛により、いずれもソウルにPKが与えられた。1本目はGK林が見事なセーブで防いだが、ラストプレーとなった2本目を決められた広島は、土壇場で勝ち点2を逃すこととなった。

 1本目はCKの守備の際、おそらく水本が相手に対して不適切な妨害をしたと断定されたのだろう。確かにリプレーでは水本の手が相手ユニホームにかかり、手を使っているように見えなくもない。だが、それなりに多くの取材・観戦し、レベルは比べようもないが学生時代にDF一筋だった身から言わせて頂ければ、あれで笛が吹かれるならプレーにならない。お手上げである。

 2本目のPK判定に至っては触れたか触れないか程度の話で、俳優ならば大根との評価を下されるべきシミュレーション。あの場面からは主審の“何とかしてソウルを同点にさせなければならない”使命感すら介在しているように見えた。

 サッカーはコンタクトの避けられないスポーツであり、そこに意志が混入するから面白くも厄介だ。DFはFWを自由にさせじと身体を当て、FWはそれを出し抜こうと身体を使う。点を取られまいとする意志、取ろうとする意志を肉体に伝達させ、ギリギリのところでせめぎ合う。そしてここに『見えざる意志』も加わってくる。

 サッカーにおける最前線であるゴール前、ましてやペナルティーエリアでは、攻撃側は倒されたなら、守備側は倒せばPKになる可能性が高まるとルールとして認識している。リスクとしては守備側のほうが大きい。攻撃側が意識的に倒れようとすればアンフェアな行為だが(今回の2本目のような)、仮に無意識下に優位性が体現されたとしたら……。精神科医でも脳科学者でもないので確かなことは分からないが、「つもりはなかったけど、そうなった」「振り返れば、そうする気もほんの少しはあったかもしれないが、その時は何も考えていなかった」ということは、日常生活でもよくあることだろう。本人でも見えない意志を他人が判別するのは難しい。

 さらに言えば「力学」と「視覚」の問題もあるような気がする。例えば守備側が5の力量でショルダーチャージをしたとする。対する攻撃側が5以上の力量で拮抗、あるいは優勢となるが、4であった場合には「対抗したけど抑えられた」と映るだろう。1とか2は「弱っちょろいFW」と酷評されそうだ。しかし、3で負けたらルール上では正当であっても、もしかしたら守備側が過度のチャージをしたと見えるかもしれない。視覚によって人の印象も変わる恐れがある、という可能性の推察である。

 前置きが長くなってしまったが、ではいかにして疑惑の判定、誤審を防ぐか。個人的な見解としては、もっとも有効なのは映像による判定の導入であろう。もっと言えばそれしかしかないのでは、と考えている。

 もう長らく議論されてきた。今年のFIFAの会合でも議題に上がったと聞く。ゴールラインを割ったか否かを判定する「ホークアイ」や「ゴールレフ」などのいわゆる『ゴールラインテクノロジー』は試験的かつ実践的に導入されるようになってきているが、ビデオ判定はブラッター会長が採用に消極的で進展しないとも言われている。

 その理由として挙げられるのは大きく2つ。まずは「時間がかかり流れを断ち切る」というもの。だが、これは解決できるはずだ。いまや映像技術は瞬時に再生できるし、ゴール後や判定後のわずかな時間で判別が可能だ。絶えずビデオで確認するのではなく、回数制限して判定を希望する際に宣言するなど、アメフトのNFLで採用しているような方式にする手もある。

 もうひとつの理由が「審判は人間がするもの」「権威が失われる」「そうした判定も含めてサッカー」というもの。もちろん、判定は審判団がするもので、ビデオはその補助的なものという位置づけを守れば問題はないと思われる。

 疑惑が生まれる判定や誤審は選手に余計なプレッシャーを与え、観戦者もストレスを受ける。何より競技そのものの魅力を低下させる要因となる。抗議でピッチが騒然とするのは見苦しいし、そちらのほうが流れを断ち切るものだ。誰もが動画サイト等でプレー再生できる時代だ。「やっぱりおかしいじゃないか」と後々までわだかまるのなら、その場で嫌疑の芽を摘み取っておいたほうが良い。

 ビデオ判定の適用にはしっかりとしたルール整備が必要だが、試してみる価値は十分にある。サッカーの魅力を損なわずに、むしろフェアプレーの推進、審判の質の向上にも寄与するのではないかと期待している。(山内雄司=スポーツライター)

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