【コラム】山内雄司

問題の本質を受け止める姿勢が欠落 浦和 過去の不十分な対応が招いた“クラブ最大の危機”

[ 2014年3月14日 05:30 ]

13日、処分を受け会見を行った浦和・淵田社長
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 Jリーグの対応は早かった。村井チェアマンは10日の時点での浦和レッズ・淵田社長の報告を不十分とし、なるべく早くに再提出するように求める一方で、12日には「一刻一刻、信頼が失墜している」との危機感から、再報告を待たずに処分を検討していた。そして下されたのがJ史上初となる無観客試合開催というもの。これに対してチェアマンは「サポーターそのものが強く影響されるほうが問題の本質が伝わる」と語っており、レッズの現場での稚拙な対応と、報告においての散見された危機認識の欠如を見抜いたチェアマンの強いでメッセージが感じられる。

 程度については様々な意見があろうが、収入面、他クラブへの波及、そしてチェアマンの言う通りサポーターへの影響を考えても、非常に重いものと言えるだろう。つまりは「とんでもないことをしたのですよ」「これだけの迷惑をかけるのですよ」とハッキリと目に見える形で国内外に示すことで、レッズに十字架を背負わせたのである。もう次は絶対にあってはならない。すべてを見直し再生せよ。もうこれ以上、Jリーグのブランドは貶めるな、と。

 それを受けてレッズがどのような決意を表明するのかに注目した。だが、Jリーグの処分から程なく発表されたその経緯報告と内部処分は、“この機に及んでも”というべき内容、表記で暗澹たる気持ちにさせられた。本当にレッズは変わっていけるのだろうか。全文を是非HPで確認してもらいたいが、まず冒頭でこう書かれている。

 『Jリーグ第2節「浦和レッズvsサガン鳥栖」において、浦和レッズ側ゴール裏である北サイドスタンドのコンコース入場ゲートにサポーターによる差別的と考えられる横断幕が掲出されました』

 差別的と考えられる?その時点ではそうだったのだろうが、それこそがクラブの抱える問題の核心であるのに、なおも「考えられる」と表記しているのはどういうわけだろう。いまだ差別的と断定しないことの真意が知りたい。事実関係についても、なるべく詳細にという意図は感じられるが、警備会社の警備員の対応が不十分であったかのような記述が幾つも見受けられる。クラブスタッフも現場で横断幕を確認しているのに、後の対応も警備員に任せきり。そこに対しての「なぜ?」が書かれずに、警備員がどうした、どうしなかったばかりが並ぶのは、まるで責任を“薄めたい”のかと疑ってしまう。逃れの容認まるで違和感を覚える。

 その他にも違和感があったり不十分な記述は多いのだが、その最たるものは原因についてであろう。

 『差別的行為にあたる当該横断幕の取り扱いを適切に行えなかったのは、クラブスタッフの差別に対する感度の低さが最大の原因と考えております』

 一読すると流してしまいそうだが、これは酷いまやかしだ。クラブスタッフという書き方で、あたかも現場の人員についてであるかのような示唆、誘導がなされているのだ。差別に対する意識が不足していたのは、現場クラブスタッフだけでもなく、警備会社でもなく、クラブ自体だ。適切に取り扱う?ただ引っ剥がすことが出来なかったのは、スタッフではなく、クラブそのものなのだ!

 単なる粗探しと思う人も多いだろう。ただ、こうした状況での公式な文書には、明確な説明が必要である。なぜ?が不完全だったり、責任の所在が不明瞭、あるいは筋違いでは意味を成さない。

 内部処分もまた、決意とは程遠いものであった。淵田社長の役員報酬20パーセントカット、それも本人の申し入れによる自主返納である。申し入れなければなかったのだろうか。続いてこう書かれている。『関係社員につきましても、社内規定に従って処分を検討します』

 正体見たり、である。なぜここで曖昧な表記になるのか。関係社員とは現場にいたスタッフということか。そうだとしたら、問題の本質を真摯に受け止める姿勢が欠落している。下に責任を被せる企業と誤認されかねない言い分となる。さらにいえば、社内規定で検討しますなどという、木で鼻をくくったような誠意ない回答で、誰が納得するというのか。検討しますなんて悠長なことを言っている場合ではない。余りにも自分たちに甘いと言わざるを得ない。

 社長の言うとおり、クラブ最大の危機である。しかし、それはこれまでの危機に対して、十分に対応してこなかった積み重ねであり、今度こそイチから出直す覚悟がなければ、レッズに未来はない。もう一片の責任逃れもまやかしも通用しない。正直、不安は尽きず、暗澹たる思いだが、クラブの今後を見守るしかない。

 レッズを真摯に愛するサポーターは、その多くが今回の件を自分たちのことと捉え、自ら出来うることを真剣に考え、責任を背負って向き合っている。クラブが彼らとともにこの危機を乗り越え、新たな未来を築くためにどのような行動をとっていくのか。十字架の重みを片時も忘れてはならない。(山内雄司=スポーツライター)

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