【コラム】山内雄司

フォルラン加入 見込み通りなら6億円は決して高くない

[ 2014年2月3日 05:30 ]

C大阪が獲得したウルグアイ代表FWフォルラン
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 ディエゴ・フォルランのセレッソ大阪入りが正式にリリースされた。これはもう天晴れと言うしかない。セレッソの岡野雅夫社長は昨年8月に行われた日本代表対ウルグアイ代表の一戦を観戦し、2ゴールを挙げたウルグアイの英雄の獲得を決意したという。しかし、相手は世界でも有数の点取り屋である。34歳と確実にキャリアの晩期に差し掛かりつつあるとはいえ、そのバリューはまだまだ高い。

 マンチェスター・ユナイテッド、ビジャレアル、アトレティコ・マドリード、インテルと欧州の第一線で活躍し、ウルグアイ代表としても100試合以上に出場している。ワールドカップ前回大会のMVP、得点王という誰もが認めるトップ・オブ・トップであり、“普通ならば”とてもじゃないが名前の出てこない選手であったはずだ。

 だが、もはや普通になってしまっている「身の丈経営」「経費削減」に真っ向から風穴を開けた社長および首脳陣の姿勢は、セレッソの成長のみならず、リーグの再興に貴重な一石を投じる英断だと言える。

 もちろんビジネスである以上、勝算がなければならない。大博打を打って、コケたらはいそれまでよ、というわけにはいかない。柿谷曜一朗がブレイクし、山口蛍、扇原貴宏、南野拓実、丸橋祐介といった育成選手も順調に成長し、若い女性も含めて集客は上向いている。ここでさらにビッグネームで畳みかけてスタジアムを埋めよう、スポンサーを獲得しようとする攻めの経営は、苦境に立たされたプロクラブのひとつのビジネスモデルとして大きな注目を集める。

 しかしながら、スポーツに、そしてそのビジネスに絶対はない。12月までで年俸約6億円と言われるフォルランがいかに世界屈指のストライカーであっても、日本のサッカーにフィットするかはまだ分からない。当然ながら負傷による離脱だって考えられる。ただ、そうしたリスクを差し引いても、セレッソの目論見はおそらくすでに成功の兆しを見せている。私事ではあるが、サッカーに少しでも興味ある友人、知人に会うと必ずと言っていいほど本田圭佑と並んでフォルランの話題となる。

 皆、イキイキとした表情でセレッソの今季への期待を語り出す。完全にオフの主役はセレッソのものであり、実際にフォルランが来日すればメディアも全国レベルで取り上げるだろう。人々の関心が集まれば、そこに投資を考える企業は出てくる。見込み通りフォルランが活躍してくれれば、企業イメージ、クラブイメージも高まり、6億円は決して高くないものとなる。

 無い袖は振れないと歯ぎしりするクラブもあろうが、今回のセレッソの姿勢はそうしたクラブも含めて、少なからず戦略的なヒントになるのではないか。興行としての魅力をどのように高め、目的に即していかに資金面でアプローチしていくか。特にサッカーの契約は何が起こるか、どう転ぶか分からず、チーム編成するうえでもなかなかに難しい命題だが、そこに踏み込んだセレッソのビジネス面、マインド面での気骨と、実現に漕ぎつけた行動力は評価に値する。どことは明かさないが、個人的には「クラブとしてこれが本当の興行の仕方だと思う。何よりスタジアムに来てくれるお客さんにもっと楽しんでほしい」という岡野社長の言葉を聞かせたいクラブもある。

 とにかく“ワクワク大賞”はセレッソに決まりだ。興行はまずワクワクさせなきゃ。お金が先で、お客さんにもっと楽しんでほしいという原理原則は後回し、ワクワク感を削ぐような決定を急いだ団体も、その姿勢を見習う必要があるだろう。(山内雄司=スポーツライター)

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