【コラム】山内雄司

移籍話題 それぞれの覚悟と生き様

[ 2014年1月11日 05:30 ]

入団会見でガリアーニ副会長と(右)とACミランのユニホームを持つ本田
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 毎年のことながら、この季節は国内外での移籍話題で持ちきりとなる。その先頭を走っているのは何といっても本田圭佑であろう。日本代表のエースであり、ワールドカップブラジル大会でもその一挙手一投足(フィールドプレーヤーなので一挙足一投足か?)が注目されるが、これまでリーグやクラブの格からいえば、マンチェスター・ユナイテッドの香川真司やインテルの長友佑都、シャルケの内田篤人らブンデスリーガの面々に後れを取っているようにも見られていた。しかし、オランダからロシアへ、そしてついに“長靴を履いた”。それもあのACミランである。会見の様子や現地の反応を見ても、本田に対する期待は大きい。何よりミランが背番号10を用意したことにそれは表れている。カカ、バロテッリと組むトライアングルがチームをどのように変えるのか、またサン・シーロのピッチが本田を変えるのか。実に興味深い。

 国内に目を転じると、今オフはGKの動きが活発だ。GKは替えの効かないポジションなだけに、レギュラークラスの移籍がひとつあれば、移籍元も同レベルの人材を確保する必要があり、これが連鎖して“玉突き”を起こす。西川周作が浦和へ、林卓人は広島へ、藤ケ谷陽介が磐田へ行けば、G大阪には東口順昭が加わる。これらは8日現在で発表された移籍だが、川口能活や林彰洋らの動向が注目される。また、これらの人事はレギュラー手前のGKの移動も誘発させ、大移動の状況を呈している。

 守護神という形容から、ゴールを守ることに直結するキャッチングやセービングの技術に目を奪われがちだし、たしかにそれは最重視する部分であるが、GKはフィールドプレーヤーと同等にチーム戦術遂行のうえで大きな役割を担っている。そのポジショニングとDFラインとの関係性、フィードの速さや精度、繋ぐのか放り込むのか……。資質と戦術のマッチングは見所のひとつだ。横っ飛びでセーブすれば「ナイスッ!」となるチームもあれば、それ以上が求められるチームもある。その前のDFとの連携はどうだったのか、ポジショニングはどうだったのか。もし体勢を崩さずキャッチ出来ていたなら、素早いフィードでビッグチャンスになっていたかもしれない。技術が戦術にどう寄与されるか、優れたマッチングを見せるのはどのクラブと選手だろうか。楽しみである。

 さて、数ある移籍劇のなかで個人的に気になるのが岩政大樹と大迫勇也、そして小野伸二である。岩政はタイのテロ・サーサナ、大迫は1860ミュンヘンに決まり、小野は札幌で合意に達したと言われている。

 不思議に思う人もいるだろう。なぜタイなのか、なぜ2部のクラブなのか。これはもう本人及び代理人や双方のクラブ関係者しか分からないし、そこに何かを見出したからというより他にない。ひとつ言えるのは、たとえ人から不思議がられても、人がレベル落ちじゃないかと言っても、それもまたプロフットボーラーの生き様であるということ。本田のところで『リーグやクラブの格』と書いた。だが、選手としての格とは別の話だ。どんな環境でも自己を高められる部分はあろうし、有名なビッグクラブへ行くことだけが、ではあるまい。そこで何を見せるか、どう振る舞うか。

 プロとはその道に覚悟を持って立ち向かう人間である。特にスポーツの世界では、すぐさま結果が生活に反映するだけに、常に覚悟の有無を試されているようなものだ。だからこそ、いつでも自分の生活──収入面、家族のこと、やりがい、などなど──を客観視して決断を下す。そして、それが正しいと信じる。今回の移籍劇でもやがて成功、失敗とカテゴリー分けされることなるが、それが無駄とは他人には言い切れない。本人のなかで消化され、さらなる覚悟の原動力となれば、それもまた良いではないか。

 とはいえ、私もこの移籍は良かった、悪かったと色々と言うだろう。プロスポーツが競技そのものを突き詰めるべきものである以上、それは致し方ない。と同時に、そこに自分を刻み込もうとするプロとしての生き様には、リーグやクラブの格の違いは関係ないはず。全員が幸せな移籍とはならないだろうが、それぞれの覚悟と生き様を見つめていきたい。(山内雄司=スポーツライター)

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