【コラム】山内雄司

世界を驚かすだけの可能性が少なからずある

[ 2013年11月29日 05:30 ]

日本代表の山口(左)と柿谷
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 遅ればせながらオランダ、ベルギー戦について触れなければなるまい。というのも、私は前回のコラムで「更迭の決断を下すべき」と書いた。ザッケローニ監督のままでは停滞から抜け出せない、ワールドカップでの希望は見出し難いとの思いからであったが、もはやその意見を押し通すことは出来ない。

 相手の出来云々を抜きにして、日本代表は欧州の地で、その強豪を脅かした。内容と結果の両方を示したのだから、更迭の理由を無理矢理見つけるほうが不自然かつ困難だ。掌返しと言われるかもしれないが、このままザッケローニ体制でブラジルに行き、世界と伍して戦う我らが代表を見つめていく腹づもりは整った。それほどまでに意義ある遠征だった。

 正直なところ、オランダ戦のスタメンは意外だった。大迫、山口、西川にこのタイミングでチャンスを与えるのは、指揮官の中で2戦トータルでのテストを考慮したのだろうし、当然と言えば当然のそんなテスト起用もこれまではほぼ見られなかった。レギュラーメンバーへの深い信頼とチャンスを与えられないサブ組との格差が正当な競争、チーム力の底上げを妨げ、閉塞感を生む要因となっていただけに、この起用も「結果より内容。テストしたが彼らはまだ時間が必要」とのエクスキューズにならなければ良いな、と思わず穿った見方をしてしまったが、この起用がハマった。

 山口は完全に長谷部、遠藤の“アンタッチャブルコンビ”に風穴を空けた。彼自身は前半は苦労していたが、その献身性と積極性で長谷部の良さを引き出した。後半は遠藤をフォローしつつ、自らも飛び出しを図った。前後半の色分けというオプションをもたらしたのは大きな収穫と言える。大迫も長谷部のパスに迷わず、的確に反応。このシュートがなかったら、その後の反撃も難しくなる価値ある一撃に、何としてでも信頼を勝ち取りたいとする気概を感じさせた。西川も然り。彼らが劇的にチームを活性化させたといっても過言ではない。

 ベルギー戦ではダブル酒井、柿谷、森重が登場し、また新たな色をつけてくれた。中2日という日程の影響であろうが、相手やコンディションによって違った組み合わせを、強豪を相手に試せたことに価値がある。なぜこれまでやらなかったのか、との疑問は残るが、まずは指揮官自身の危機意識が奏功したということか。

 無論、手放しで喜ぶのは間違いだろう。オランダは自ら試合を苦しくしてくれたし、ベルギーは調整モードで、負傷を恐れてか守備は緩慢で、攻撃も個人個人で組織力を明らかにしようとはしなかった。そんな相手にミスから簡単に失点する、セットプレーでもマークが外れる、少し厳しい圧力がかかるとリズムを失う、など課題も多い。だが、オランダ戦での本田のゴール、ベルギー戦での岡崎のゴールなど、このチームには世界を驚かすだけの可能性が少なからずあるとの思いを抱くことが出来た。

 楽観も安堵も必要はない。ブラジルであのような素晴らしいゴールを見るには、さらに数段の階段を上らなければならないはずだ。集う期間も試合も僅か。ザッケローニ監督とその選手たちはさらなる危機意識をもって奮起して欲しい。

 お前が言うな?

 その突っ込み、批判も甘んじて受ける。ザッケローニ監督では本番で勝てないと言ってきた。それが間違い、見る目なしということになればそれが一番良いのだから。(山内雄司=スポーツライター)

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