【コラム】山内雄司

最強の名を欲しいままにした栄光のクラブは・・・

[ 2013年11月8日 06:00 ]

 第30節のダービーマッチに敗れたジュビロ磐田。数字の上ではまだ降格を免れる可能性を残しているが、現実的には99%決したと言っていいだろう。94年のJリーグ加入からトップリーグで戦い、リーグ年間優勝3回、ステージ優勝6回、ナビスコカップ2回と数々のタイトルを獲得し、一時は最強の名を欲しいままにした栄光のクラブの凋落には、やはり寂しさを感じずにはいられない。

 私事だが、93年末にサッカー専門誌の編集部員となり、最初に担当したクラブであるだけに余計に感慨深い。当時は地方都市の牧歌的な雰囲気を存分に漂わせつつ、新たなチャレンジへのエネルギーがそこかしこに感じられた。95年、イタリアのパルマを訪れた際、街の雰囲気やパルマFCホームスタジアムのエンニオ・タルディーニの佇まいが磐田のそれと驚くほど似通っており、地方から強豪への階段を駆け上がるパルマのような様を演じてくれたら、Jのひとつのモデルケースになると思っていた。95年途中には担当を外れてしまったが、ほどなくして磐田はそれを見事にやってのけた。97年から黄金時代を築き上げ、チーム名の通りに歓喜に包まれるようになったのを頼もしく見つめていたが……。

 ここ数年の低迷には様々な理由付けがされている。黄金期からの変換に苦しんだ、というのもひとつ。時の流れには逆らえない。チームも代謝をしていかなければならないが、なかなかに難しい作業だ。特に時代を築いたチーム、メンバーを変えるのは容易ではない。栄光の遺伝子を継承しつつ、と口で言うのは簡単だが、戦いながら代謝を促進するには、長期的かつ綿密な計画が必要だ。その長期的なビジョンに欠けたという意見もある。育成面、トップチームの実情、地域性、金銭面を含む組織運営を総合的に見地から判断し方向を示す。これは日本のGM制の確立にもつながる問題点であり、こうすべきという解答は一朝一夕には得られない。

 磐田も2年前にGM制を導入。若き強化リーダー・服部健二GMの手腕に期待したが、成績面ではその効果は現れていない。服部GMは今季限りで退任の方向と聞くが、その是非は別として、GMが機能しなければ強化はままならない。チームに縁のある監督ばかりで新たな風が吹き込まないというのもある。これも、だから悪いとは言い切れない。ビジョン、クラブの組織論へと通ずる話だ。新たにGM、監督を招聘するにせよ、クラブとしての指針が重要であるのはいうまでもない。戦力確保を含め、今オフの姿勢が磐田の今後に直結する。

 試合を観ていて感じるのは、選手たちもなぜここまで勝てないのか、よく分からなくなっているのではないかということ。自分たちはやるべきことをしようと懸命だか、失点してしまう。どうすれば良いのか自信が持てない。でもやるしかない。また駄目だった。という悪循環。精神論になってしまうが、とかく覇気がない。競い負けない、走り負けない、気を抜かないといった、いわば当たり前のことが出来ていないようだ。30節まで50失点を喫しているが、8割近くが後半に奪われている。要因は諸々あろうが、惜しい試合を落としてしまうのは、厳しさの欠如とは言えないか。戦術はもちろん大切だが、いかなる時でもファイトすること。その精神、体力は備わっているか。どこまで自分たちに厳しく出来るか。

 降格したならば、それはショックに違いない。だが、もしもサッカーの神様がいたとして、彼によって運命が定められるのならば、「もっとタフになりなさい」という思し召しと割り切り、イチから出直して欲しい。そこかしこにエネルギーを発散していたあの頃のように。

 記者生活の始まりにサッカーの楽しさ、Jリーグの素晴らしさをたくさん教えてくれたクラブへの私なりのエールということで駄文を終える。(山内雄司=スポーツライター)

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