【コラム】山内雄司

2ステージ制移行の“矛盾”“犠牲”“リスク” サッカーは、それを愛するすべての人のもの

[ 2013年9月27日 06:00 ]

浦和サポーターが2ステージ制反対の横断幕を掲げる
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 地位も分別もある大人が雁首揃えてこんな幼稚なことしかできなかったとは、驚きと失望を禁じ得ない。考えに考えた末での苦渋の決断だそうだが、明らかになったのは「俺たちは必死にやっている。お前らは口出しするな」いう特権意識であり、クラブを愛し、サッカーのある生活を心から慈しむ人々は、ものの見事に裏切られた。

 Jリーグは2015年からの2ステージ制(+スーパーステージ+チャンピオンシップ)を決定。すべてが密室で秘密裏に進められ、説明もされず一緒に考えることも許されなかったサポーターは、スタンドで懸命に声を上げたが、一切を無視された。これを暴挙と言わずしてどう形容できようか。100年構想などとドデカい理想をぶち上げ、ファンやサポーターと共に歩む姿勢を唄いながら、いざとなったら愚弄する。正体見たり。20年の歳月は信頼関係を築くに十分な期間に思えたが、Jは単なる主従関係でありたかったのだと理解できる。サポーターは黙って年貢を納めてりゃいいんだ、と言わんばかり。甘いかもしれないが、大事なお金の話だからこそ、十分すぎるほどの説明と議論を、ともに歩んできた者へ成すべきだった。

 そもそも減収は今に始まったわけでなく、もっと危機感をオープンに議論を重ねれば、大会形式にメスを入れなくても済んだかもしれない。急に「今ある危機に手をこまねくわけにはいかなかったんだ」などど、何やら格好良さげに言われても、むしろいかに手をこまねいてきたかを露呈しているように見える。

 新大会形式も乱暴なものだ。第1、第2ステージの各優勝クラブに、それぞれ2位のクラブを加えてスーパーステージを戦うという。おいおい、優勝は何だったんだ!

 また、年間勝ち点1位のクラブは直接チャンピオンシップに進めるというのも首を傾げざるを得ない。「その重さを考慮した」(大東チェアマン)と言うが、これほど矛盾した話はない。年間勝ち点1位の重さを考慮すればするほど、スーパーステージ、チャンピオンシップの不要性は高まる。よくルールは事前に明示してあり、それに則ってやるのだから文句をいう筋合いはない、という意見があるが、ルールに矛盾や不備があれば、リーグの意味、チャンピオンの価値は損なわれる。勝負にアンフェアを持ち込めば、アンフェアを重ねるしか取り繕えないということか。

 選手にしても複雑だろう。心身をすり減らして戦っても得られるのは暫定チャンピオンという頼りなげな呼称で、真のチャンピオンと認められるには、そこまでのリーグでの戦いをないがしろにするかのようなヘンテコな暫定チャンピオン決定試合をさらにこなさなければならない。ACL出場クラブは現行でも過酷な戦いを強いられているのに、さらに戦場へと駆り出される。疲労困憊で満足なプレーができずチャンピオンに辿り着けない悔しさ、情けなさは机に座る人には分からないだろう。成績が生活に直結するだけに、選手には死活問題となる。主役たる選手を犠牲にして強化費を捻出する?本末転倒も甚だしい。

 ライト層が取り込めるという根拠も希薄だ。例えば「クラブ数が多くてよく分からなーい」という人が、こんなややこしい形式に馴染むだろうか。もっと腹立たしいのは、コア層への配慮なき上から目線だ。「こっちで用意すれば、結局のところ盛り上がるんでしょ?」「優勝がかかってりゃもちろん来るよね?」とでも言っているかのような高の括り方。そうでなくては、あれだけの反対の声を無視した理由が見当たらない。

 多くの矛盾、犠牲、リスクを払って手にする10億円を超すとされる増収分だが、各クラブに分配せず、強化への軍資金とするそうだ。ただ、どう使うかは未定という。これも些かおかしな話である。これまで何にいくら不足していたから優先的に、とか、ここは細かな計画を立てていたけれど資金がなかったから、と明確な用途も示せず、10億円あればあれもこれもできるなんて、とてもじゃないが成長戦略とは言えない。戦略どころか、これまでやるべきことしてこなかったと白状しているようなものだ。

 問題点を洗い出し、真摯に反省して出直すのは悪いことではない。だが、それには関わる多くの人々の理解と賛同が必要であり、皆で同じ方向に歩んでいかなければならないはず。しかし今回の決定で、Jリーグは少なくとも選手やサポーターは『皆』に入らないとの認識を明らかにした。そんな先導で未来が見いだせるとは思わない。

 言いたいことはまだ山ほどある。ただ、偉そうなことばかり言っているのも理解している。自分を含めたメディアもきちんと役割を果たしてきたのか。それを自問しつつ、今後も反対の声を上げ続けていくつもりだ。青臭い、格好つけていると思われるだろうが、『サッカーは誰かのものでない。それを愛するすべての人のものだ』と信じている。(山内雄司=スポーツライター)

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