【コラム】山内雄司

DFだけの問題ではない 球際での強さも厳しさも気迫も、組織的な危機意識も集中力も欠けていた

[ 2013年8月15日 06:00 ]

<日本2―4ウルグアイ>厳しい表情で試合を見つめるザッケローニ監督
Photo By スポニチ

国際親善試合 日本2―4ウルグアイ
(8月14日 宮城ス)
 吉田は確かに酷かった。1失点目は付いていながら今野の位置を把握しておらずセルフジャッジで裏を突かれ、そればかりか必死に追わずに傷口を広げた。2失点目はFKによるものだったが、それを与えてしまったのは吉田の緩慢なプレーだった。ポジションが悪く、付いていたはずのスアレスとの競り合いを今野に担わせてしまった。決定的に映ったのは3失点目。説明の必要もないだろう。

 ただ、吉田だけを攻撃するのは筋違いだ。むしろ彼はよく耐えている。守備陣崩壊の“フロントマン”として、いまや責任を一身に背負っている、いや背負わされている感がある。

 では今野はどうだったか。カバーに回っても不成功に終わることも多い。ヘッドはいっぱいいっぱい。周囲のコントロールという点でも及第点には届かない。内田はどうか。淡々とエグいプレーをする“ベビーフェイス・アサシン”だが、凄みがなければ「可愛さ余って……」になる。中途半端な寄せ、位置取りが目についた。吉田を慰める役割ばかり見せられては、「自分はどうなんだ」「仲良しならばこそもっと怒ってもいいだろう?」なんてツッコミたくもなる。

 酒井高に関しては、辛辣すぎると承知した上で、現時点で代表のユニホームを着るのは尚早と言わざるを得ない。0ー2とされた後の前半30分、中盤でボールカットした際、前線に視線を送らず真っ先に後ろを向いた。タイミングが合わなかったか少し持ち出した後、今度も後ろに送ることしか考えず、しかも最悪のキック。見事にウルグアイに決定機をプレゼントする。後半にも意図の見えないバックパスでピンチを招いた。ともに相手のシュートミスに助けられたが、絶対にやってはいけないプレーを繰り返すなど、絶好のアピールの場であるのに判断力、余裕、闘争心の欠如が際立った。

 とはいえ、DFだけの問題ではない。それを印象づけたのが4失点目だ。左サイドから侵入してきたウルグアイは中央を含めて4人。これに対して日本は4バックプラス遠藤、香川の6人で対処する。枚数から言えば優位な状況だ。まずは内田がボール保持者をケア。遠藤もカバーに入るが、ふたりとも寄せが甘く、捉えきれない。結果、危険なパスを通されてしまった。続いて川島が飛び込むも触ることができず、逆サイドへ振られる。川島が突っ込むまでマークしていた香川は、川島が捕球するとジャッジし、マークを外して前線へ帰陣しかけていた。大慌てで戻るも後の祭り。ドフリーのゴンサレスに易々と決めさせてしまった。

 全員がきっちりと役割を最後まで全うしていれば防げたもの。6人だけではなく、その前段階でも長谷部、柿谷の動きもチェックすれば、チームとしての不手際と理解できる。個々の球際での強さも厳しさも気迫も、組織的な危機意識も集中力も不足していた。

 吉田を筆頭に個人攻撃のようになってしまったが、彼らより責を負うべきはもちろんザッケローニ監督である。選手をチョイスし、ピッチに送り出しているのは指揮官である。戦えない選手がいるならばそれは監督のミスであり、戦う策が見いだせない、課題が改善されないならば、それも監督の力量に関わる部分となる。

 コンフェデでの守備崩壊を受けて、いかに是正するかが注目された一戦で、またしても惨敗では言い訳のしようがない。それなのに「この時期に強豪とやればこうなる」と言ってみたり、「トップに立てなんてリクエストされてない」との保身と誤解されかねない発言からは、ザッケローニ監督自身が余裕と手立てを失っているように思える。ラインを高く保つことにアイデンティティを強調するが、それを世界の強豪が相手でも有効にするだけの駆け引きなり、戦い方を植え付けきれていないために、選手に責任が押しつけられているのが現状だ。頑固は往々にして誉め言葉だが、言い換えれば柔軟性に欠け、チームを膠着させている。

 融合も大きなテーマに掲げられ、監督自身も「ここからスタートライン」とリップサービスしたが、前回のコラムでも指摘したとおり、本心はそんなことを考えていないようだ。柿谷をスタメンとし、豊田を途中出場させたものの、ほぼレギュラーはそのまま。豊田以外は試合のすう勢が決まってから山口を投入したのみで、新戦力の台頭が期待された守備陣では伊野波、駒野の確定組?で交代枠を残して終わり。課題に際して森重は必ずテストすべき人材だったろう。メンバー固定の温さが停滞の一因として語られる中、チャレンジより固定路線の継承を宣言するかのような交代。頑固というより、もしや本当に打つ手が見つからないのかと背筋が冷たくなる。

 いくら強豪とはいえども、ホームでこんな意気地のないゲームを観せられては、とてもじゃないが来年に希望は持てない。もう遅いという意見もあろうが、ぬるいチームのままブラジルに向かうくらいなら、本気で白紙に戻して、少々粗かろうが敵ばかりか味方にも噛みつぐらい血気盛んなチームで乗り込みたいとさえ考えてしまう。

 果たして協会はこのままでいいと言うのか。もっと要求を明確にし、それが叶わない場合は考慮され、もしもの準備は進められているのか。最後に大仁会長のコメントを引用する。

 「ウルグアイは南米予選を戦っているだけに強かった。コンフェデからこの試合までで課題がはっきりした。今後どれだけやれるかだろう」

 さすが偉い人は違う。動じない。というより実にのん気だ。(山内雄司=スポーツライター)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る