【コラム】山内雄司

“本当のテスト”の場を与えてみたい

[ 2013年7月26日 06:00 ]

 ザッケローニ監督は中国戦から全員を入れ替えてオーストラリア戦に臨んだ。すべての新たな力をチェックしたいという大義名分は成立するが、むしろ“成立させるため”の荒っぽくも合理的な手法に思える。こうしておけば、どんな試合をしようとも「有意義なテストだった」で押し通せる。結果の重要性は薄まり、采配面もさほど問われることはなくなる。実際、多くのファンからも「海外組を呼べないのだからテストで正解」「中国戦、オーストラリア戦で全員見て、良かった選手を韓国戦にピックアップするんだな。なるほど」と、納得の声が聞かれる。ザッケローニ監督、協会側の“プラン勝ち”といったところであろう。

 そもそも指揮官は、ほぼメンバーを入れ替えるつもりはないのだろう。Jリーグ勢を試す機会はこれまでにもあった。使えるのでは、と考えるなら、ここまで待たなくても良かった。柿谷や豊田などはJで十分な活躍を果たしており、ファンの間からも「なぜ呼ばないんだ」という待望論は、以前から存在していた。でも、頑としてその声に応えようとはしなかった。もうすでに枠はいっぱいで、新たに選手を加えるなら誰かを外さなくてはならなくなる。そこまでは考えていない、というのが実状ではないか。練習期間もごくわずかの急造チームで、端から「仕方ない」という言い訳の上で参加する大会。

 メディアは「本当に仕方ないのか」という議論はせずに『ラストサバイバル』『さあ下克上だ!』などと煽ってくれる。コンフェデでの3連敗で闘莉王の露出が増えたと思ったら、「若手中心のテスト」の一言で「そうですか」とばかりに闘莉王の3文字を引っ込めてくれる。まさか「楽なものだ」とは考えていないだろうが、指揮官はとりあえず責任論や采配への疑問から遠ざかることができるだけでなく、「Jもテストしたぞ」という免罪符まで手に入れることになる。協会公認のノルマも責任もない国際大会。それが本当にテストと言えるのか。

 同じ土俵で競って初めて優劣が付けられる。中国戦で活躍した柿谷や工藤、オーストラリア戦での大迫や齋藤、豊田にしても、本当のテスト、つまり大会後に現レギュラーチームに組み入れられて起用される機会が訪れるとは限らない。それがあって初めてテストとなるならば、メディアも協会もファンも、もっと議論や疑問を呈していかなければならないだろう。コンフェデの検証、課題の克服をあやふやにしたままでは前に進めないし、厳しい環境でのメンバー争いがなくてはさらなる活性化も困難だ。日本サッカー全体で、もっと危機感を表に出すべきだと考える。

 さて、まだ韓国戦前なので確定的なことは言いづらく、韓国戦後には変わっていることもあるとお断りした上で、個人的には豊田、齋藤、山田、山口には“本当のテスト”の場を与えてみたいと思う。無論、それはザッケローニ監督の仕事であり、だからこそ指揮官が東アジアカップをどう総括するのか。「脅かす存在はいなかった」でテスト終了となるのか。期待して見守りたい。(山内雄司=スポーツライター)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る