【コラム】山内雄司

貪欲なまでの勝利への執念もなく 浦和 シーズン通した戦略が見えない

[ 2013年5月4日 06:00 ]

<ムアントン・浦和>サポーターにあいさつする浦和イレブン
Photo By 共同

 前回に続いて浦和の話題となってしまうことをお許し頂きたい。オフに積極的な補強を果たし、大きな注目を集めただけに、現状が歯がゆく、いや、もっと言えば危機感に苛まれてならないのだ。

 ACLグループステージ最終戦。敵地に乗り込んだ浦和はムアントン・ユナイテッド(タイ)に1ー0と勝利を収めたが、広州恒大(中国)と全北現代(韓国)が引き分けたために敗退が決まった。この試合だけを切り取れば、30度を越す猛暑のアウェーでよくぞ勝点3を奪った、と称賛を受けるべきとの見方もあろうが、一方で浦和が抱える問題が露呈されたのも事実である。

 原口、梅崎を負傷で、鈴木を出場停止で欠き、膝を痛めていた槙野はベンチスタート。ペトロヴィッチ監督は柏木をボランチに下げ、シャドーに矢島、そして3バックの一角に坪井を今季初スタメンさせた。出られない選手のポジションを埋めるのは当然のこととして、しかしこれはあくまでも“手を打った”だけであり、勝利への“手を尽くした”ことには当たらない。ボランチは鈴木、阿部がファーストチョイスとしても、那須がDFを務める現状ではセカンドチョイスは柏木が下がるばかりで、しかしこれも機能しているとは言い難く、応急処置の域を出ない。出ずっぱりの選手が負傷したら穴埋めの繰り返しでは、チームの総合力は高まらない。

 開幕前、多くの識者が「2チームできる」と選手層の厚さを強みとして挙げたが、蓋を開けてみればメンバーの固定化が進み、リーグとACLの双方を戦うことへの対策が示されない。ターンオーバーどころか、戦力をコントロールできていない印象さえ受けてしまう。本当にコンディションが良く、動ける、戦える選手をチョイスしているのか。リフレッシュや総合力の底上げのための起用は必要ないのか。山田暢や坪井はベンチに座らせるばかりでいいのか。疑問は多い。

 「内容は良かった」「選手はよくやった」という指揮官のコメントも、もはや枕詞のようで説得力に欠ける。内容を競うスポーツならばこのままでもいいのだろうが、リーグでも大宮、清水に同じような形で敗れ、分析力の低さも明らかにしてしまった。

 それにつけてもACLである。07年の制覇は、ボロボロになろうが何としてでも勝ち獲るという選手、クラブの熱さがサポーター、ファンを巻き込んで巨大な渦となったと認識している。その代償として手にしかけたリーグ優勝を逃し、当時のオジェック監督は批判に晒されもしたが、アジアの頂点に立ったという純然たる事実と、Jクラブの威信、浦和レッズというクラブの名誉は高らかに宣言された。

 しかし今回、選手が懸命に戦ったのは無論のこと理解できるが、戦略なくリーグの流れのまま戦い、熱いムーブメントを生み出せないままにグループステージ敗退した。それでいて「選手はよくやった」「勝点10も取ったのだが……」「リーグ戦に集中する」と言ってしまう指揮官を批判しないわけにはいかない。JクラブとしてACLを戦う意義、浦和レッズとしてアジアの頂きに立つ意味をどう考えていたのか。

 「胸を張って帰ってこい」と言うのは自由だが、私は悔しさ、情けなさでいっぱいで、とてもそんな気にならない。せめてこの敗退をとことんまで突き詰めて、今後に確実な形、勝利で活かしていかなければ、浦和はこれからも『良いサッカー』止まりとなる。勝利のため、総合力アップのための綿密な取り組み、チームとクラブの一層の戦略的マネジメント。そして、これは説明は難しいが、赤いユニフォームに身を包む『魂』の部分。現在の浦和にはそれら多くが不足している。

 貪欲なまでの勝利への執念を見せてほしい。(山内雄二=スポーツライター)

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