【コラム】山内雄司

際立つ遠藤の存在感 “チームの心臓”不在時の危機管理に課題

[ 2013年2月8日 06:00 ]

<日本3-0ラトビア>後半、遠藤保仁(左)が登場してから劇的に変化した日本代表
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 良くも悪くも“ザックジャパンな試合”だった。

 シーズン前のJリーグ組のコンディションが整わないこともあり、遠藤をスタメンから外し、実に10人が海外組という布陣。初招集の大津も海外から。これまでの宮市や宇佐美を招集してきたザッケローニ監督の興味は、やはり国内よりも海外。無論、選手の選出は代表監督の仕事であり、そこに思考や哲学があって然るべき。ただ、こうなるともう、これから現代表に割って入るのはJリーガーではほとんど難しいと言わざるを得ない。

 指揮官の頭の中では、おそらく9割方はブラジル行きのメンバーは決していると思われ、あとはどれほど現有戦力の総合値を上げるかという作業になる。だが、3か月のブランクがあるとはいえ、それにはラトビアはいささか物足りない相手であった。勝利はもちろん、内容を問わなければならない。そして、内容はと言うと冒頭の一文に尽きる。

 前半はパスを回すものの、バイタルでスペースを作り出そうとするアクションが不足していた。ボールを持てる。ひとりはかわせる。ならばもっとボールだけでなく人も動かなければ、スペースワークは先細りとなる。足下へのパス、先細ってからのスルーパスという選択肢の狭さは、この相手では手応えを感じられても、ワールドカップで上位を目指すにはいささか頼りない。長友が果敢にクロスを上げたが、強豪国はそこまでやらせてくれないだろう。相手に合わせるというか、巧いけれどもこじんまり、ダイナミズムに欠けるという、低調な日本代表にありがちな、いささか退屈な展開となった。

 その要因としては、誰もが感じたであろうが、遠藤の不在にあった。細貝は彼の持ち味である迫力ある潰しを随所に披露したが、組み立てに参加するには至らなかった。だからこそコンビを組む長谷部にはもう少し持ち上がりやダイレクトでの縦パスを期待したが、前詰まりの状況を変えることは出来なかった。この点は、後半に遠藤が登場してから劇的に変わる。ただ、細貝、長谷部に責任のすべてを背負わすつもりは毛頭なく、やはり遠藤がチームの心臓であることを改めて認識させられると同時に、遠藤不在時の危機管理に課題を残したと言える。

 岡崎をワントップに、右から清武、本田、香川と並ぶ布陣は、それだけでチャンスを作ってくれそうな雰囲気はある。だが、遠藤のチームコントロールなくして、それぞれが「何かしなきゃ」という意識が走りすぎて、シンプルに特徴を表現できなかったように思う。清武の存在感の希薄さを、遠藤のいる後半途中から出場した乾と比較するのは酷であろうが、シュートへのイメージがあまり感じられない前半は、不安を禁じ得ないものだった。

 逆に言えば、継続したコンセプトの徹底を標榜する指揮官の納得いく後半だったろうし、好調時の日本代表らしさを見出すことができたが、90分を通じてみれば、以前のコラムにも書いたメンバー固定の閉塞感や危険性、ゴールという目的を見失い気味となるパスワークへの依存も顔を覗かせただけに、3-0の試合に合格点をつけるのは難しい。

 岡崎らしさの出た2ゴール、香川のアシストによる本田のゴールと、ポジティブな印象で試合を終えヨルダン戦への弾みとなったから良しとする考えもあるが、その先を見据えた強化があと1年余りでどこまで進むのか、このような温い試合をしていて大丈夫なのかという不安も感じさせた。マッチアップについては監督はじめ選手たちの関与するところではないが、この相手なればこそ、遠藤不在であろうと前半からシビアに試合に入り、ドライなまでにぶちかまして圧倒的な意気込みを示して欲しかった。(山内雄司=スポーツライター)

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