【コラム】山内雄司

『選手名鑑』を持ってJリーグ観戦へ

[ 2019年3月2日 06:30 ]

選手名鑑を手に、スタジアムで観戦しよう!!
Photo By スポニチ

 今季のJリーグが開幕し、日本全国のサッカーファンが胸躍らせる熱い1年が始まった。各クラブとも新たな選手の加入があり、一方で移籍や引退などで去っていった選手もいる。メンバーが変わったことで、愛するクラブはどんな布陣になるのか、どんなサッカースタイルに変貌していくのか、ビジョンや目標に向かって向けてどれほど近づいていくのかなど、興味が尽きることはないだろう。また、他クラブの状況も気になる。補強によってどんなメンバーになったのか、どこが最大のライバルとなるのか、あのクラブとはいつ対戦するのかといった下調べも必要となる。

 そんな時に便利なのが、何といっても『選手名鑑』である。ということで、今回はちょっと趣向を変えて、<選手名鑑のススメ>を書いてみたい。

 現在、紙媒体、ウェブ媒体合わせて多くのメディアから様々な形態で提供されており、手軽に見られるという観点からいえば、スマホ版が便利という人も多いと思う。ただ、サッカー専門誌からフリーランスのライターとなった筆者は、インターネットもない時代から誌面を作っていたおっさんということもあり、どうしても紙の選手名鑑がしっくりくる。なので、ここでは勝手ながらサッカー雑誌の選手名鑑について綴る。

 私が専門誌に勤務していた90年代半ばからの10年ほどは、増刊という形を取らず通常の週刊誌の付録として中綴じの選手名鑑が挟み込まれ、雑誌は特別価格で販売された。この選手名鑑付録号は、1年でももっとも部数が出る、つまり売れる号であるので、ライバル誌に引けを取らないよう、書店やコンビニで隣同士に並んでいても購買者に手に取ってもらえるよう気合を入れて製作したものだ。いかなる情報を記すのか、どの大きさで写真を見せるのか、細かいところではポジション順にするか背番号順かといった協議を重ねる。いずれも読者にとっていかに見やすく、有益な情報が分かりやすく配置されているかに主題が置かれる。

 筆者の勤務当時は各クラブに担当制が敷かれていたため、身長体重や経歴、出場歴といった情報の最後に寸評欄があり、いかに普段の取材からその選手を的確に言い表すことができるかを、ちょっぴり記者間で張り合っているようなところもあった。今季の展望といった文章も記者名が最後に記されるため、なかには少しばかり肩入れし過ぎとも思える熱い文章も散見された。公平性という面ではどうかと思うが、それもまた楽しみにしてくれる読者もいたのではないかと、都合の良い解釈をしていたものだ。

 一番気を遣うのは、何といっても名鑑の肝である選手の写真だ。これがクラブによって背景の色が¥や明るさが異なったり、顔のサイズが異なったりする。できるだけ選手の顔が鮮明に、大きさも均等に、明るい印象になるように心がけるのだが、これがなかなか地味に大変な作業であった。

 選手の最終登録前に作業に入るため、登録期限までに新たな選手が加入したりする。その度に広報の方に情報をお願いするなど、クラブ、Jリーグの協力なくして作り得なかった。その点で、一緒になって開幕間近のJリーグを盛り上げていこうとする一体感があったと思い起こす。どれも顔が並んでいる同じようなデザインで代わり映えしないじゃないか、という意見もあるだろうが、何とか代わり映えする本を作ってやろうという、編集者、記者としては苦しくもやりがいある作業でもあった。

 と、昔を懐かしがっていても「知ったこっちゃねえ」と言われてお終りなので、ここからはこれを読まれている皆様に、選手名鑑の活用法を記していこう。無論、自己流なのであくまでも参考程度に願います。

 まず、出来れば2冊を用意して頂きたい。1冊は保存用で1冊は持ち運び用として。保存用は家でゆっくり見て頂くためでもあるが、1年経つとまた新しい名鑑、また1年、さらに1年と、本棚に簡易的なJリーグの年表が出来上がってくる。これが堪らなく嬉しい。このシーズンはどんな選手がいて、どんな戦いをして、自分自身のあんな喜びやこんな悔しさを味わったと思い返すことは、Jの歴史であるとともに、その一端を担ってきたファンやサポーター個人の歴史でもある。もしかしたら93年のJ開幕からの年間を全部揃えている方もいるかもしれない。そうなると年表どころか、ちょっとした博物館と言ってもいい。

 そしてもう1冊は、いつでも持ち歩き、サッカー談議の資料とすると同時に、観戦のお供としてめいっぱい使い古してもらいたい。

 雑誌時代はスマホが普及していない時代だった。編集部に戻れば資料はあるが、現場で原稿を書かなければならないとき、有線無線問わずインターネット回線がないときなど、自分の記憶と取材ノートに頼ることになるが、それでは確実性に欠ける。そんな際に名鑑があれば、心強い味方になる。

 観戦する度に名鑑に書き込んでしまうのだ。布陣や試合経過、気づいたことなどは取材ノートに記してあるが、それ以外の選手個々の特徴であったり、選手について気づいたことは、名鑑に書いてしまう。そうすれば、対戦相手の選手の特徴もだんだんとつかめるようになってくる。写真があるのでイメージがしやすく、その選手への情報が重なってくることで、見方や印象も変わってくる。より距離が縮まるのだ。

 とはいっても、名鑑に直接書き込むにはスペースが足りない。そこで筆者は最初のうちは、名鑑サイズよりワンサイズ小さい紙をページのサイドに貼って、そこに記すことをしていたが、試合が進むたびに名鑑がどんどん分厚くなり、書こうとしてサイドに紙を張り出す際、畳もうとする際に折れたり破けたりしてしまった。そこで紙を貼って横に開くのではなく、そのページの上にトレーシングペーパーを貼ってみたところ、これが大正解であった。透けているために名前を書いたり枠を区切らなくても、失礼ながら選手の顔の上から極細のサインペンなどで特徴や思いついたことを書いてしまう。トレーシングペーパーは薄いのでかさばらず、めくれば顔写真とともに基本データが分かる。担当外のクラブの選手などは、こうして覚えたものだった。

 と、ここまで自らの活用法を調子に乗ってだらだらと書いてきたが、最近の綺麗な紙で分厚い増刊号の選手名鑑では、この方法は使えないことに今更ながら気づいてしまった。単なる昔話をしたがるおっさんになってしまったようだ。

 とはいえ、選手名鑑が心躍るツールであることに変わりはない。皆様も自分なりの楽しみ方で、名鑑を本棚に入れ続けてくれたら、かつてそれを製作してきた者としても嬉しい限りだ。そして、どんなにデジタルな世の中になっても、紙の名鑑は残って欲しいというのが願いでもある。

 選手名鑑を持ってJリーグへ――。出版社の回し者みたいな原稿でしたね。(山内雄司=スポーツライター)

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