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井手口陽介 負傷から復帰しようとするプロの生き様を受け止めたい

右ヒザ後十字じん帯断裂の大けがをおったグロイター・フュルトMF井手口陽介
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 残念なニュースが飛び込んできた。

 ドイツのグロイター・フュルトに所属する井手口陽介選手が、先月30日に行われた第8節のドレスデン戦で負傷交代し、今月2日、クラブから容態が発表された。

 右ヒザ後十字じん帯断裂で復帰時期は未定という。それ以上の情報がないので、負傷の程度が軽微なものかそうではないのか、離脱が短期で済むのか長期になるのかは分からない。無論、復帰までの期間が短いに越したことはない。だが、負傷が完治しても万全のコンディションに整えるにはさらに幾ばくかの日数を有するだろう。井手口は第5節でグロイター・フュルトに移籍後、初出場初得点し、続く6節でも先発。7節は控えに回ったものの8節で先発復帰し、これからとレギュラーポジション獲得に向けて本格的なサバイバルに突入するといった大事な時期での離脱だけに、さぞかし本人も悔しいことだろう。

 ただでさえ、ここまでは苦闘と苦悩の連続だった。昨年は6月に代表デビューすると、その後のロシアワールドカップ最終予選でもスタメン出場し、本大会出場を決したオーストラリア戦でダメ押しゴールを決めるなど、いきなり代表レギュラーの座をつかんだかに見えた。だが、今年1月にイングランドの2部に相当するフットボールリーグ・チャンピオンシップのリーズ・ユナイテッドへ移籍すると、すぐさまスペイン2部(ラリーガ2)のクルトゥラル・レオネサに期限付き移籍する。環境になかなか適応できず、プレータイムも伸びなかった。

 これによって代表戦出場も5月の1試合に留まり、ロシア行きの選から漏れることに。選手の夢の舞台であるワールドカップ出場の叶わなかった焦燥感を乗り越え、8月にドイツ2部(ツヴァイテリーガ)のグロイター・フュルトに期限付き移籍した矢先だった。

 スポーツの中でも有数のハードなフィジカルコンタクトを有するサッカーにおいて、いかに準備していてもこうした事態は往々にして起こりえる。大きな負傷がないことが優れた選手の条件のひとつのように語られる風潮もあるが、避けられない事態、仕方ない側面はどの選手にも同じくらいある。今回は井手口がその厄災に浴してしまったということであり、不運であったという言い方もできる。

 こうした選手の大きな負傷を目の当たりにすると、こちらまで心が痛む。言い方は悪いが、彼らは自分自身が商品であり、その存在価値を決めるのは試合での活躍や戦績に他ならない。ピッチに立てないということは、自らの価値を高めよう、証明しようとするチャンスさえ得られないのである。そのツラさや落胆はいかばかりかと想像するが、それこそ本人と本人にごく近い人たちにしか分かりえないだろう。ならばこちらとしては、早く、しかし焦らずに最善の状態での復帰を願う、あるいは祈るのみである。

 井手口は間違いなくこれからの日本サッカーに大きな影響を残し得る才能を持っている。だからこそ、今回のニュースは衝撃をもって報じられた。そんな彼が今できることは、とにかく負傷からの回復に専念することだ。

 「孤独だった」「なんで独りだけでこんなこと(別メニューでの調整や単独でのリハビリ等)しているんだろう」――。負傷で長期離脱を余儀なくされた選手の多くが語る言葉だ。そんなツラい日々を思い起こさせてしまうインタビューもしばしば行ってきた。だからこそ、井手口や、彼と同じように、あるいは彼以上に孤独と戦っている選手たちに言いたい。確かに願うことや、祈ることしかできない。でも、あなたのことを待ちわびている人は必ずいる。多くのファンやサポーターは何かの折に、あなたのことを思う。決して独りではない、と分かってもらいたい。

 しかしながら、井手口のようなケースでは、悪気なくつまらないことを言ってしまう人も少なからずいる。

 「移籍が失敗だったんだ。ビザ取得の厳しいイングランドに行って、期限付きで出されるのは分かっていたはず。無理して行くからワールドカップも棒に振ったんだ」

 「移籍さえしていなければ、この負傷もなかったかもしれない。移籍で試合に出られなくなったからコンディションも上がらず、大ケガしてしまうんだ」

 「移籍してから不幸続きじゃん」

 こんな不確かなことをしたり顔で言うのは辛抱ならない。前述したように選手の存在価値を決めるのは試合での活躍や戦績であり、その面では移籍が結果に有意義に表れる=成功、表れない=失敗という論評は間違いではないかもしれない。ただ、それを決められるのは基本的に本人でしかなかろう。悔しさは内包しつつ、ベンチ外も成功のための必要な期間だったと捉えているかもしれない。人が言うほど得るものがなかったとは思っていないかもしれない。ましてや、移籍と負傷に因果関係を求めるのは無理があるし、話が違う。

 だから、そんな意味のない、つまらないことは口にしないで、覚悟をもって新たなチャレンジに挑み、覚悟をもって負傷から復帰しようとするプロの生き様を、ありのまま受け止めてみたらどうかと思う。

 ともあれ、井手口の負傷の程度が軽いものであることを願っている。(山内雄司=スポーツライター)

[ 2018年10月5日 06:00 ]

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