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ハイレベルな見所が詰まった試合

W杯決勝トーナメント準決勝   フランス1―0ベルギー ( 2018年7月10日    サンクトペテルブルク )

ベルギー戦に勝利して喜ぶフランス代表
Photo By スポニチ

 終了間際の超高速カウンターで日本を下したベルギーと、新星エムバペが衝撃的な活躍を果たしているフランスとの準決勝は、戦術的に見所の多い試合であった。

 ベルギーは攻撃時において右SBのシャドリを高い位置に押し出して、3−2−4−1とも言える布陣で好機を伺う。右サイドはシャドリが仕掛けてデブルイネが、左サイドではアザールが仕掛けてフェライニが絡み、ボール支配率も高まっていく。しかし、フランスは守備が機能した。ベルギーのワントップ、ルカクをCBコンビでケアし、サイドアタックに対してはパバール、エルナンデスの両サイドバックにそれぞれポグバ、カンテがゾーンから受け渡して対峙する。

 アザールやデブライネをペナルティエリアに入れさせては勝利はままならない。このテーマを、スムーズな連係と激しく身体を寄せる“デュエル”で愚直なまでに遂行していた。このため、ベルギーはボールを保持しながらもルカクとの距離が数メートル遠く、彼がボールを得たときのパワーを活かすことができなかった。それではとベルギーはミドルで数回のチャンスを迎えたが、ロリスがこれに鋭く、かつ冷静に対処し、フランスが流れをつかんでいく。

 主に右サイドからエムバペがスピードと突破力を発揮しようとする。序盤はこれを警戒するベルギーに抑えられていたが、ポグバやグリエーズマンの状況判断や展開力、そして何より最大の強みであるエムバペを有効に使おうとする意志の統一が感じられた。38分にはこれが奏功し、エムバペが素晴らしい突破を見せる。右SBのパバールがすかさず走り込んで追い抜かしてパスをもらってシュート。これは惜しくもベルギーGKクルトワのビッグセーブでゴールを割れなかったが、ベルギーに負けず劣らずのカウンターの意識の高さと訓練の高さを見せつける。

 枚数を多くして攻め切りたいベルギーと、ペナルティエリア前で奪ってベルギー守備ラインが4枚に戻る前にサイドのスペース、あるいは3バックの前にワンクッション入れたいフランスの思惑と攻防には、わずかな緩みも許されない精密さを理想に、研ぎ澄まされた緊張感が漂っていた。

 後半、手の打ち合いが始まる。後半開始早々にフランスに先制されたベルギーは、その8分後にデンベレに代えてメルテンスを投入して右サイドの起点を担わせ、デブライネを1枚下げた位置からその舵を取らせる。これがハマってメルテンスは幾度もクロスでチャンスを作るが、フランスのCBコンビはベルギーの高さにも屈しなかったし、両SBやボランチはセカンドボールへの強い執着を見せた。

 高い集中力を保って戦えている。メルテンスには手を焼かされたが、ルカクを孤立化させることに成功している。持たせておいても人数をかけてスペースを消せば、アザールやデブライネがいずれ仕掛けてボールを奪うこともできる。そうなれば自分たちには広大なスペースを活用できるカウンターチャンスが生まれる可能性もある。おそらくは1点勝負。十分に守り切れるし、追加点が取れたら万々歳。フランスのデシャン監督はそう考えたのであろう。ワントップのジルーまで自陣に下げ、徹底して守った。自ら信念を持って守り倒した。流麗なシャンパンフットボールを期待した人はがっかりしたかもしれない。だが技術的にも優れたタレントの数々が、エゴを捨てて勝負に徹し、緊張感漂うなかで守り抜いた様からは、攻めに攻める戦いとは別の意味での凄味が感じられた。

 案の定、試合後のベルギーからは自陣で11人で守ったフランスに対する“苦情”が寄せられたようだ。マルティネス監督は「ボールが死んだ試合だった」と語り、クルトワは「フランスはアンチ・フットボールだった」とコメントしている。

 彼らの言い分も分かる。しかしながら、ノックアウトの戦いはそうしたものであり、その最高峰のワールドカップでは勝つことこそが最優先される。よく言われるが「強い者が勝つのではなく勝った者が強い」ということなのだろう。その点においてフランスは間違いなく強かった。

 面白かったかと問われれば、そうとは言い切れない。それでも、つまらなかったかと問われれば、面白かったと即答する。そんな試合であり、十分にハイレベルな見所が詰まった試合だったと感じている。(山内雄司=スポーツライター)

[ 2018年7月12日 16:40 ]

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