【コラム】山内雄司

何をチームにもたらすかは選手 W杯最終予選を終えて

[ 2017年9月14日 20:10 ]

W杯出場を喜ぶハリルホジッチ監督と長谷部(左)
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 今更ながら、ロシア行きを決したオーストラリア戦でのハリルホジッチ監督の用兵、采配は見事だった。試合前にサウジアラビアがUAEに敗れるという好ニュースがもたらされて条件は緩やかにはなったが、勝てば本大会進出が決まるという一戦に、本田、香川、岡崎といったこれまでチームを牽引してきたベテランをベンチに置き、浅野、井手口をスタメン起用した。大一番、しかも相手はこれまで幾度となく日本の前に立ちはだかってきたオーストラリアである。ホームとはいえ厳しい戦いになるのは目に見えている。ベテランの経験値を重要視したくなる局面だ。だが、指揮官は台頭してきたニューパワーに期待した。その両者のゴールで勝利したのだから、これは指揮官についても素直に賞賛すべきであろう。

 では、なぜベテランに舵を切らなかったのか。おそらく長谷部の復帰が大きな要因となっているのではなかろうか。長谷部の存在がどれほどのものかはもはや説明の必要もない。長谷部を欠いたアウェーのUAE戦は今野が代役を務め、結果を残したが、続くタイ戦では今野も欠場し、酒井高が山口とボランチコンビを組んだ。急造につき、やはり試合をコントロールするまでには至らず、物足りなさが残った。さらにはイラク戦では遠藤航と井手口という若手コンビでボランチコンビとしたが、リード役には本田を配した。

 このイラク戦で井手口は後半に脳しんとうを起こして退くこととなったが、ハリルホジッチ監督は最終予選初出場の若武者に大いに手応えを感じたのだろう。長谷部という絶対的な存在の復帰で、試合勘に薄れコンディションにも不安のある本田、香川を出すより、長谷部にアンカーを任せ、井手口、浅野、山口のモビリティを存分に活用しようとした。これは賭けにも近い選択にも見えたが、左翼を担った乾とともに、彼らはキャプテンの指揮の下、大きな仕事をやり遂げ、ハリルホジッチ監督の賭けにおいて、その勝率を高めたのだった。

 これまでもずっと長谷部がいてこそ、という図式であり、それがますます証明されたという点で、彼の代役を託す必要性はさらに増したが、結果的に様々なシチュエーションによるオプションを増やし、人材の組み合わせによってベテランと若手を融合させることにもなった。これは苦しい予選の中で大きな収穫となったのではないか。

 本田や香川、岡崎らは突き上げに地位を脅かされる危機感を募らせているだろう。若手はこれまで以上に気概に満ちているだろう。意図されたものではなかったが、長谷部の離脱と復帰が指揮官の勝負師の一面を引き出し、チームに新たな色と可能性をもたらしたといっても言い過ぎではないように思える。

 誰を使うか、どのように使うか。これは監督の仕事だが、何をチームにもたらすかは選手に出来る大きな仕事である。そんなことを改めて考えさせられた最終予選だった。(山内雄司=スポーツライター)

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