【コラム】山内雄司

ファンは離れていくしかなくなってしまう

[ 2017年8月24日 23:00 ]

<浦和・川崎F>後半、途中出場の浦和・武藤(右)が反撃のゴールを決めたが…
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 ACL準々決勝第1戦は、チームの現状が如実に現れる結果となった。

 浦和はアップ中に足の付け根に違和感を訴えた柏木を急遽メンバーから外さざるを得なくなる。堀監督が「役割は同じだが、選手としてのキャラクターは違う。その影響はあったかもしれない」と回顧したように、この出来事は試合前からナーバスになる要素を含んでいたように思える。マウリシオを中央に、右に遠藤、左に槙野を配する3バックも、まだ急造の感は否めず、常にぎこちなさを漂わせる。矢島を引き気味に3ボランチ気味にしてブロックを形成する構えであったが、これは川崎Fにとっては“ビビリ”に映ったようだ。試合後、川崎FのMF谷口はこう語っている。

「浦和は前線に張ってこずに、後ろに人がいた。失点を怖がっているのかなという感じがした。自分たちが攻めてしまえば、いけるんじゃないかと思っていた」

 後ろを固めるにしても、人がいるだけで、どこで引っ掛けるか、その後どうするかというアプローチが見当たらない。まずは守備から、は間違いではないが、意図や意思が希薄なために川崎Fにとってはやりやすかったはずだ。

 浦和にしてみれば、ボールを持たれるのは仕方ないが、入り込ませなければ良いという考えであったのだろう。ただ、それにしてはポジションは曖昧で、当たるのも人任せ。人の数に頼る“見せ掛け”のブロックで局面の激しさももの足らず、川崎Fに余裕を与える結果となった。

 川崎Fは焦らずにボールを回す。奪いに出てこない、プレッシャーがないのを理解し、引っ掛かりそうなら一旦戻し、引っ掛かってもしっかりと即座に奪い返す。そしてまた機を見る。

「相手がブロックを組んでいて簡単には崩せないなと思ったが、エウシーニョともっと右サイドを崩せるんじゃないかとは思っていた」(小林)

 ブロックを崩すのはサイドから。その意識はチーム全体に浸透していた。

 ハードワークでボールを奪い返し、中村の配給に絶対の信頼感を持ち、小林、家長が一気に加速し、チャンスと見るや畳み掛ける。失敗したら切り替てまた奪い返す。チームとしてのコンセプトが明確な川崎は、スイッチのオンオフが実にスムーズでオートマチックだ。前半のゴールは左サイドを小刻みなパス交換で浦和の守備をずらせておいて、家長がスペースを突く。中村とのコンビは合わなかったが、中村が自ら飛び込んで突き抜ける。この時点で勝負あり。マイナスクロスを小林が難なく決めた。

 2得点目はエドゥアルド・ネットのスルーパスから小林が抜け出し、シュートのこぼれ球をエウシーニョが押し込んだものだが、これも川崎Fの切り替えの早さが光った。

 3点目は何本のパスを繋いだだろう。浦和が当たりに来ないのをあざ笑うかのようにゆったりと繋いで、最後は家長が瞬時のペースアップで抜き去ってクロス。小林もフリーでヘッドを打ち込んだ。

 それにしても、浦和は重症と言わざるを得ない。すべての失点においておよそ無抵抗のままであった。前述したように人だけはたくさん配した。しかし、人にもボールにも当たらない。そこはいるな、そこ埋めとけよ、と見るばかりで、川崎Fの余裕になぜか余裕で付き合い、ちょっとしたペースアップに付いていけずにサイドを簡単に破られた。

 マークの受け渡しも規律が感じられない。出所を押さえず、突破に対処しないものだから、中央の槙野はたまらず突然にマークを離してボールに行き小林をフリーにさせた。その守備には「エエッ」となったが、これは槙野個人の問題ではなく、やはりチームの問題であり、マウリシオという戦力を得ても、守備はまるで改善されていないことは明らかだ。

 攻撃では1点を返したが、その後も攻めるわけでもなく、守りは人垣戦法のみで闘志も気概も薄い。堀監督となり、マウリシオ、菊池や矢島と若干のメンバー変更はあったが、ペトロヴィッチ体制の悪い流れ、癖は払拭できていない。むしろ、ペトロヴィッチ前監督の可変システムから可変を失い、何をすべきかも失っている印象だ。

 守備ありきなら、守備の戦術を作っていくのが当然だが、施しようが整理されていない様子で、それが攻撃の持ち味さえも奪い去っている。チームとしても個人としてもパワーがなく、川崎Fのようなコンセプトの明確なチームと対峙すると、まさに大人と子供の戦いとなってしまう。

 諦める必要はないが、事態はさらに深刻の一路を辿っている。選手の変更だけでなく、抜本的な改革が必要なのは明らかであろう。強化部はいかに考えているのか。

 いったい浦和レッズは何を求め、どこに向かおうとしているのか。道筋が示されれば敗戦も受け入れられるが、それがなければファンは離れていくしかなくなってしまうではないか。新体制に期待した人々の希望も失いかける試合であったと言える。

 クラブの底力の有無が、極めて危機的状況で試されている。(山内雄司=スポーツライター)

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