【コラム】山内雄司

ビデオ判定導入の問題点 本来の目的以外に?

[ 2016年12月16日 00:10 ]

クラブW杯決勝進出を果たした鹿島
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 クラブワールドカップは鹿島が南米王者のアトレティコ・ナシオナルを下して決勝に進出した。この試合の先制点となった土居のPKは、大会で導入されているVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)による判定から生まれたもの。なんでもFIFA主催大会では初めてのケースであり、海外でも話題になっているそうだ。

 柴崎のFKから約1分が経過していた。そのため主審が試合を中断させた理由が咄嗟には分からなかった。実際、選手たちも戸惑った様子で、「なんで止まっているのか分からなかった」(昌子)、「どのプレーを判定するのだろうと思った」(土居)とコメントしている。

 筆者は以前から数度、このコラムでビデオ判定導入の必要性を記してきたが、実際に目の当たりにすると良い面も悪い面もあると感じた。良い面からいうと、際どいプレーに際して映像という“証拠”を持ち出すことでモヤモヤはなくなる。アトレティコ・ナシオナルにとってはそれでも文句は言いたくなろうが、実際に足はかかっており、納得せざるを得ないはずだ。だが、一番の懸念材料であった試合の流れを切ってしまうという弊害は残されてしまった。主審自らがピッチ脇でモニターを確認することで時間がかかってしまったように思う。柴崎も「長いなとは思った」と、初の事態を振り返っている。

 現状ではビデオ室から際どいプレーに対してピッチの審判団に状況を逐一伝え、主審が自身で確認が必要と思われる際に試合を中断する。あくまでも最終的な判断が主審に委ねられるのはその権威を守るためにも必要とも思われるが、ここは議論の分かれるところだ。

 個人的な意見を言えば、主審はモニター確認には加わらず、選手やスタンドの困惑を取り去るアクションに徹したらどうか。たとえば主審が自身でビデオ判定が必要な状況に際したら、イエローやレッドのように、何らかのカードを掲げるなり、専用の動作でVOR判定に入ったことを明確に示す。その合図で両チームのキャプテンが主審の下に集まり、どのプレーに対するものなのかの説明を受け、3人はその位置にとどまってビデオ室の判定を待つ。そうしたほうがスムーズではなかろうか。

 判定には約2分間を要したが、これほどかかるものなのか、というのも率直な感想だ。今後もこれほどかかるのならば、際どいプレーが連発する試合では主審も数回の活用をためらってしまうケースも考えられる。とはいえ、テニスやメジャーリーグベースボールなどのように、選手側から回数制限つきで判定を求める、いわゆるチャレンジ制度には反対だ。主たる理由は、本来の目的以外に、流れを断ち切るために使用される可能性があるからである。

 改めて立場を明らかにするが、筆者はビデオ判定の導入に賛成である。サッカーそのものがガラリと変わってしまうのでは、という見方もあるが、選手に選択権がないのであれば、そうは影響ないように思われる。FIFAのインファンティノ会長はロシアW杯での本格導入を目指しているようだが、“歴史的PK”を題材にさらに円滑に活用するための議論と実践が深まればよい。(山内雄二=スポーツライター)

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