【コラム】山内雄司

来季に向けて

[ 2018年12月14日 23:30 ]

 私事で恐縮だが、先月から今月ここまでにかけて、サッカー関係者との会合、懇親会がいくつか続いた。他愛もない話から込み入った話まで、関係者同士が情報交換をする光景に、改めて思ったことがある。

 ひとつには、選手と同様にクラブスタッフも様々な葛藤を抱えながら、それぞれの職務を懸命に遂行しようとし、自らの出処進退を模索しているということである。川口能活をはじめ、今季も多くの選手がスパイクを脱ぐ。監督やコーチ陣、そしてクラブの各部門の担当者もまた、クラブによっては総入れ替え、そうでなくても部分的な入れ替えが行われる。

 ここで名を明かすことはできないが、筆者が会ったJ1クラブのコーチも退任が決まったという。今季の成績は決して悪いものではなかったが、強化の方針や方向性の修正、その他の人事の関係で、配置替えとなったようだ。

 また、ある強化担当スタッフは幾つものクラブを渡り歩き、クラブ毎の様々な方法論の違いに接してきたという。守秘義務により詳細については伺い知れなかったが、“中間管理職の悲哀”的な要素は多いのだろう。

 今季も終了し、各クラブも来季に向けての陣容の整備が進められている。選手はもちろんのこと、監督、コーチも毎年、いや毎日が勝負であり、彼らを常にサポートしつつ強化を下さなければならない強化担当者も、一方で常に評価の対象となっている。当然と言えば当然ながら、そうしたプロのクラブの成り立ちを考えたとき、改めて厳しい世界であることを実感する。

 同時に、Jリーグも開幕から四半世紀が経ち、各部門でのプロフェッショナリズムが醸成され、大きな括りでファミリー化されてきたのではなかろうか、との実感もある。

 何事にも手探りだった創成期を経て、リーグも、クラブも、選手も、クラブスタッフも、指導陣も徐々に、確実に経験を積んできた。現在、監督やコーチといった指導陣には、多くの元選手がおり、クラブ運営に携わるスタッフのなかにも元選手や他クラブで研鑽を重ねてきた者が多い。同じ釜の飯を食い、ともにJリーグを、日本のサッカーを築き上げてきたという気概と自負は、互いへの信頼と尊敬という良い面に表れている。彼らは様々なクラブ、職種で全国に散らばりながら、ひとたび集うと、手弁当で苦労した昔話から現在の状況まで、話が尽きることはない。過去を懐かしむだけでなく、現在の課題やどうすればさらにクラブやリーグが成長するかを真剣に情報交換する。その姿に大いに感銘を受けた。

 さて、同じく時を刻みながらともに歩んできた我々メディアはどうだろうか。多くのファンから『マスゴミ』との有り難くない敬称で呼ばれ、一番成長していない部分と目されているが、自己弁護ではなく、研鑽を積んでいる同業者は多い。熱心に取材し、豊富な知識を持ち、日本サッカーの現状と今後を斬る気概を有した、尊敬できる記者は多い。

 だが、その一方で「売れる」ための“エンタメディア”があるのも事実だろう。これを無くすのではなく、上手く区別し、互いに活用し合える信頼関係、尊敬心を育んでいくことが課題ではないかと個人的には考えている。

 日本サッカーの発展、とひと口に言うが、そこに終着点はない。これからも厳しい世界で経験を積み、サッカーファミリーを形成していった者たちの言葉に耳を傾け、ファミリーの一員として認められるよう、メディアも同じ釜の飯を食い、彼らのような気概と自負を全員が有することが必要なのではないか。

 と、偉そうなことを綴りつつ、ダメダメだった2018年の己を反省する。来年こそは良い記事がかけますように!(山内雄司=スポーツライター)

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