【コラム】山内雄司

長友佑都 トルコ経由ロシア行き

ガラタサライ移籍で、トルコ・イスタンブール入りし、笑顔を見せる長友
Photo By ゲッティ=共同

 冬のマーケット最終日の1月31日、長友佑都のガラタサライへの移籍が正式発表された。契約は6月30日までのレンタルで、その後は活躍いかんによって変わってきそうだが、とにもかくにも半年はトルコでプレーすることになった。言うまでもなくロシアワールドカップを見据えて出場機会を得るための決断であり、新たな環境でどこまでのパフォーマンスを得られるのか注目が集まる。

 男が遡ること7年前の同日、チェゼーナからインテルへの移籍を果たした際には、驚きとともに胸を熱くした。それまでも中田英寿をはじめ、多数の選手が欧州でのプレーに先鞭をつけていたが、長友にはその多くの選手の中にあって圧倒的にサイズの差があった。170センチにも満たない男が、欧州5大リーグの名門に加わるというニュースに、期待と同時に大いなる不安を勝手に覚えたことを思い出す。チェゼーナでの半年間で堂々とレギュラーを張りインパクトをもたらしていたとはいえ、20年ぶりに1部に昇格したクラブとインテルでは何もかもが違う。正直、難しい挑戦となるだろうと予想したものだった。

 だが、彼はやり遂げた。弾丸のようなスピードと疲れ知らずの上下動、どんな巨漢にも食らいつく闘志、さらにはそれまでの日本人像を覆す陽気さと愛嬌で、瞬く間に黒と青のユニフォームを自分のものとした。こちらが驚いた以上に、ミラノの人々は驚きをもって彼を見つめたことだろう。

 かつても名門も不遇の時代にあった。指揮官もメンバーもころころと変わった。怪我も多かった。移籍3年目以降はレギュラー争いに苦心した。それでも長友は走り続け、戦い続けた。代名詞とも言える体幹トレーニングやストイックな食事による体調管理はしばしばメディアで取り上げられた。人一倍の、あるいはそれ以上の努力なくして生き残れる世界ではないことを示す姿勢に、どれだけの人々が勇気づけられたことだろう。キャプテンマークを腕に巻き、ユウトコールを背に受け、やがてチーム最古参の選手にまでなったインテルでの偉大な足跡は、日本人の誇りといっても言い過ぎとは思わない。何よりサイズのない日本のサッカー少年・少女たちの大きな励みとなったに違いない。小柄はハンデではなく武器であり、その磨き方次第では世界のトップリーグで、また一国の代表として脚光を浴びることができる。その勇気を与えた功績は大きい。

 と、何だか辞めた際のような書き方になってしまった。自身も素晴らしい時間を過ごし愛着あるインテルを離れるのはつらく寂しいことであったろうが、もちろん彼はトルコに行っても走り、戦い続ける。ガラタサライは同じイスタンブールのフェネルバフチェ、ベシクタシュと激しい“抗争”を繰り広げるトルコの名門中の名門。イスタンブールのサッカー熱は欧州随一と称する人さえいるリーグにあって、長友もインテルで味わったものとまた違うプレッシャーを感じるかもしれない。いずれにしろ、移籍手続きも完了し、長友自身もウズウズしているに違いない。

 努力を積み重ね、サッカー選手としての生き方にも独自の哲学やノウハウが蓄積されている。家族も増えて気力も漲る。31歳というもっとも脂が乗りきる時期に目の前にワールドカップという大きな目標がある。準備万端、あとは飛び立つだけだ。

 トルコ経由ロシア行き。彼の新たなフライトに期待している。(山内雄司=スポーツライター)

[ 2018年2月1日 21:00 ]

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