【コラム】戸塚啓

大切なのは五輪を成長への糧とできるかどうか

[ 2016年8月19日 05:30 ]

リオでの戦いを終え別れの握手をする遠藤(左)と浅野
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 リオ五輪の男子サッカーは1次リーグ敗退に終わり、選手たちは所属クラブでプレーする日常に戻った。

 結果を残せなかった必然として、手倉森誠監督も、選手も、厳しい評価を受けている。

 手倉森監督は、大会前の目標とのギャップを問われている。「メダルを狙うと言っておきながら……」というものだ。

 4年前のロンドン大会で、日本はベスト4入りしている。五輪は世代ごとにメンバーが違うとはいえ、右肩上がりの成績を目ざすのは目標設定として間違っていない。

 手倉森監督はリオ五輪開幕前に、「もし負けたら、何を大きなことを言っているんだ、と思われるでしょう」と話していた。それでもなお、メダルを目標に掲げた。

 「過去を超えていくことは大事だと思っていて、4年前のベスト4を超えるならメダルを獲得するしかない。勝っていない世代がリオでメダルを獲ることが、いかに大きいことか。それを体現してみたいんですよ。オリンピックに出て満足だ、いい経験をしてくればいい、というサッカーはやらせたくない」

 もし、メダルを目ざしていなかったら──コロンビア相手に2点のビハインドを背負った状況から、追いつくことができただろうか。

 できなかったと、僕は考える。グループリーグを勝ち抜き、準々決勝、準決勝と勝ち上がっていく目標があったからこそ、コロンビア戦で勝点1をつかむことができたはずだ。2対2に追いついたあとも、3点目を奪いにいこうとしたのだ。

 1月のアジア最終予選の決勝戦で、日本は韓国を相手に0対2とリードされた。すでにリオ五輪の出場権は獲得していた。決勝戦に敗れても、失うものはない。それでも、選手たちは勝利を目ざした。「アジアチャンピオンになってリオ五輪に出場する」というチームの目標が、0対2からゲームを引っ繰り返す原動力となったのである。

 スウェーデンとの最終戦でも、チームは可能性に賭けて戦った。グループ2位浮上はコロンビアの結果次第だったが、勝点3をつかんで結果を待つことのできる状況を作り出した。

 「メダルを目ざしたからこそ、内容を向上させることのできた部分もあったと思う。メダルを目ざさなければ、打ちのめされていただけかもしれない」

 大会を終えた手倉森監督はこう話した。

 メダルラッシュの日本選手団に加わることはなく、男子サッカーのメンバーは静かに帰国している。それでも、選手一人ひとりは逞しさを増した。わずか3試合だが、かけがえのない経験を得ることができた。

 ベスト4入りした4年前のメンバーで、日本代表に定着しているのは半数にも満たない。大切なのは五輪を成長への糧とできるかどうか。志半ばで敗退した大会が意味のあるものだったことを、選手たちはクラブで証明していかなければならない。(戸塚啓=スポーツライター)

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