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【コラム】戸塚啓

オーバーエイジの招集とその人選を真剣に考えるべき

[ 2016年5月27日 05:30 ]

ギニア戦の後半、厳しい表情で戦況を見る手倉森監督
Photo By スポニチ

 たった2試合で評価が急上昇し、たった2試合で評価が急降下している。トゥーロン国際に出場している日本代表である。

 1月のリオ五輪アジア最終予選で優勝したU-23日本代表は、3月にロンドン五輪金メダルのメキシコに2対1で競り勝った。今月11日に行なわれたガーナのA代表にも、3対0で勝利した。

 勝ったチームをくさすわけにもいかないのだろうが、少なくとも表面上は世界相手の連勝として評価され、「リオで表彰台を目ざす」という手倉森誠監督の発言もあって、チームの可能性が高まっているとの認識が広がっていった。

 メキシコは4年前の五輪王者だが、五輪は年代別の大会である。4年前のロンドンで金メダルを獲得したとはいえ、まったく別のチームだと認識しなければならない。

 アジア最終予選に臨む手倉森監督のチームは、「4年前の五輪でベスト4に進出したチーム」と報道されてきたか。そんな見かたは一切なかっただろう。メキシコだって同じだ。中立地のポルトガルで勝利したのは評価できるものの、「4年前の五輪王者に勝った、だから日本は強くなっている」というのは、強引な決めつけと言わざるを得ない。

 ガーナのA代表は、国内でプレーする選手だけで編成されていた。10代の選手も多く、実質的にはひとつ世代が下のチームだった。日本に勝っても、彼らには得るものがなかった。あったとしても少量だった。負けて失うものもなかった。モチベーションを刺激する材料が、最初から見当たらなかった。

 そもそも、試合に向けたコンディションにおいて、手倉森監督のチームにはアドバンテージがあった。ホームの日本からすれば、勝って当然の相手だったのである。

 トゥーロン国際はどうか。

 コンディションのアドバンテージはない。環境はアウェーである。パラグアイ戦、ポルトガル戦が行われたスタジアムのピッチは、芝生が長いうえにデコボコだった。

 パラグアイとの第1戦は、そうした環境への適応能力が勝敗に影響を及ぼした。日本では起こり得ないミスが頻発し、自分たちでリズムを失っていった。

 第2戦はそれなりに適応していた。割り切ったプレーと持ち味を発揮するプレーを、使い分けることができていた。

 それでも勝利をつかめないのは、相手の熱量が高いからであり、単純に実力で劣っているからだと言わざるを得ない。ここで言う「実力」とはボール扱いの優劣や戦術理解度などではなく、「できることをしっかりと表現できるか」という意味だ。どちらの試合も決めるべきところで決めていれば勝てたかもしれないが、プレッシャーを感じる瞬間で選手を支える経験が、このチームの選手たちはまだまだ不足している。

 リオ五輪開幕をおよそ2か月後に控えたチームに、経験不足を問うのはどうかと思う。だが、14年1月の立ち上げから1月のアジア最終予選まで、アジア以外の国とはほとんど対戦してこなかったチームである。もっとさかのぼれば、U-20W杯の出場を逃してきた世代だ。国際経験に欠けるのは必然と言っていい。

 トゥーロン国際について言えば、好成績が当然の大会ではない。打ちのめされたチームは、これまでもあった。ケガ人が続出していることを加味しても、苦戦は避けがたい。想定外の事態ではなく、予想の範囲内である。

 リオ五輪で勝ち上がるのは、簡単ではない。だが、勝つことで得るものは間違いなくある。U-23世代だけでなく、日本サッカー全体の利益となる。

 残り時間で何ができるのか。OAの招集とその人選を真剣に考えるべきだろう。トゥーロン国際の結果を、サッカー界全体が当事者として受け止める必要があると思うのだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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