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【コラム】戸塚啓

元日本代表 代表は同じ目線で語られるべき

[ 2015年11月20日 05:30 ]

 現役のプレーヤーを「元日本代表」とすることが、個人的にすっきりこない。

 そもそも、定義があいまいである。どれぐらいの空白期間があったら「元」と表現するのか。ケガで外れているだけでも「元」になるのか。適用範囲もはっきりしないままに、「元」が便利に使われ過ぎている。

 代表チームは大きなグループの集合体である。核となるメンバーはいるべきだが、対戦相手の特徴や選手の組み合わせなどによる流動性は必要だ。選手の好不調もある。戦略的柔軟性を高めるためにも、競争原理を欠かさないためにも、絶えず変化があっていいのだろうである。

 なでしこジャパンの選手選考は分かりやすい。

 チームを率いる佐々木則夫監督は、経験と実績のある選手を尊重しつつ、戦力の底上げも進めている。今月29日に行われるオランダとの親善試合には、今年の女子W杯のメンバーからGK海堀あゆみ、DF鮫島彩、MF澤穂希、川澄奈穂美、FW大野忍らが招集されていない。

 だからといって、彼女たちが「元日本代表」と呼ばれることはない。新戦力のテストを含んだメンバー編成だと、佐々木監督が公言しているからだ。

 同時に、彼女たちの実績がリスペクトされているところもあると、個人的には感じる。たとえば、澤にはまだ代表でプレーできる実力がある。彼女自身も代表から引退するとは口にしていない。だから、元日本代表と呼ぶにはまだ早い、といった配慮が働いていると。

 日本代表についても、同じ目線で語られるべきだと思う。

 ハリルホジッチ監督のチームはW杯予選という公式戦を戦っているが、並行して中長期的視点に立っているはずである。W杯ブラジル大会のチームが、そのままW杯ロシア大会の舞台に立つようではいけない。過渡期を迎えつつある現在は、2018年を見据えたテストが行われていくべきだ。

 だとすれば、一時的に代表から離れる選手や、久しぶりに招集される選手が今後も現われるに違いない。そういった立場の選手をひと括りに「元日本代表」とするのは、チーム作りの現実に即していないだろう。代表から退くとの立場を明らかにした選手はともかく、現在進行形で代表入りを目ざしている選手に対しては、「日本代表経験者」とか「2015年日本代表」といった表現がふさわしい。長く代表から遠ざかっている選手や、ベテランと呼ばれる選手のなかにも、代表入りに相応しい選手はいるのだから。(戸塚啓=スポーツライター)

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