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【コラム】戸塚啓

不安残す五輪代表

[ 2015年4月3日 05:30 ]

戸塚啓氏の最新刊「低予算でもなぜ強い?」湘南ベルマーレと日本サッカーの現在地(光文社、本体780円)
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 収穫と課題を天秤にかければ、課題が目につくものだったかもしれない。マレーシアで行われたリオ五輪1次予選である。

 6大会連続の五輪出場はチームにとって通過点であり、手倉森誠監督も「ロンドンを上回る成績」をチームの最終目標に掲げている。五輪の表彰台というスケールからすると、ベトナム戦の2―0、マレーシア戦の1―0という結果は率直に言って物足りない。

 だが、五輪本大会で4位に食い込んだロンドン五輪のチームも、アジア予選から強さを見せつけていたわけではなかった。クウェートとのホーム&アウェイで争われた2次予選では、アウェイで1―2の苦杯をなめている。

 4か国がホーム&アウェイで戦った最終予選では、今回と同じマレーシアが同グループだった。日本は初戦でホームにマレーシアを迎え、2―0で勝利している。準備万端で臨めるホームゲームの2―0と、中1日の3試合目で対戦したアウェイ1―0に、どれほどの差があるだろうか。今回の一戦が極端に見劣りするとは、僕には思えない。

 夕方からのスコールで直前のベトナム対マカオ戦が中断され、3月31日のマレーシア戦はウォーミングアップがピッチサイドに限定された。大会通算6試合目となるピッチは、見た目にも荒れ果てていた。条件は決して良くなかったのである。むしろ、3試合を通してタフに、したたかに戦ったと言っていい。

 もちろん、現時点で最終予選の展望が明るいかを問えば、素直に首肯できないところはある。ベトナムやマレーシア相手にチャンスで決めきれないチームが、韓国やイラク、オーストラリアやUAEを攻略できるのか。疑問である。3戦全勝で1次予選を終えたマレーシア戦後、他ならぬ選手たちも課題を並べた。次の活動は7月になるだけに、「まずは所属クラブでゲームに絡むこと」と選手たちは口を揃える。

 そのうえで、いまこの時点から最終予選をどれだけ意識できるかだ。キャプテンの遠藤航は言う。

 「アジアで勝つには精神的な部分で、ハングリー精神というか、そういうところは持たなきゃいけない。戦う姿勢だったり戦う気持ちだったり、国を背負って代表として戦う覚悟だったり、そういうところは持ち続けていかなきゃいけない。それを普段の練習とかクラブの試合で感じながら──なかなか難しいところはありますけれど──つねに最終予選があるということを意識しながらプレーすることが、大事になってくると思います」

 手倉森監督へのサポート体制も、切れ目のないものにしていく必要がある。現状では7月のテストマッチと12月の合宿しか、強化のカレンダーは埋まっていない。日本代表のコーチも務める指揮官は、「A代表でハリルさんから新しいオプションを吸い上げて、それをU-22へ落とし込む」と話すが、「選手が集まる回数は要求していかなきゃいけないかな」とも話している。J1、J2リーグの合間を縫った合宿や遠征なども、考えていくべきである。

 現状のチームが最終予選突破に不安を残すのであれば、できることは何でもやっていくべきだ。まだ9か月の猶予がある。伸びしろ豊かな世代である。強化のプログラム次第で、五輪出場の可能性を拡げることはできるはずだ。(戸塚啓=スポーツライター)

 
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 戸塚啓氏の最新刊「低予算でもなぜ強い?」湘南ベルマーレと日本サッカーの現在地(光文社、本体780円)が発売された。親会社がなく、予算規模で劣勢を強いられながらここまでクラブを成長させた真壁会長や大倉社長らの奮闘の裏側を描いている。

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