【コラム】戸塚啓

南野、ザルツブルク移籍 リオ五輪を目指す選手に刺激

[ 2015年1月9日 05:30 ]

オーストリアの強豪ザルツブルクへの完全移籍が決まった南野
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 南野拓実がザルツブルクへ移籍した。苦悩の末の移籍だろうが、将来性あふれる19歳の決断を支持したい。

 新天地のザルツブルクは、南野と同世代の選手が多い。29歳のスペイン人FWソリアーノ、26歳のブラジル人FWアランが得点源を担う一方で、18歳や19歳のプレーヤーが出場機会を得ている。チームの平均年齢は23・7歳で、1部リーグ10チーム中で3番目に若い。同世代のライバルとのポジション争いによって、まだ掘り起こされていない才能が覚醒する期待に満ちている。

 昨年末に行なわれたU-21日本代表の東南アジア遠征に、スイス・ヤングボーイズ所属の久保裕也が初めて招集された。欧州から駆け付けた21歳はベストコンディションに遠かったものの、U-21タイ代表とのテストマッチで別格の存在感を見せつけた。

 対戦相手のレベルは考慮しなければいけないが、明らかに次元の違うレベルにあることを、彼は30分ほどのプレーで示した。少しばかり気が早いのを承知で言えば、ロンドン五輪代表における大津祐樹のようになるのでは、との思いを抱かせた。

 同じく欧州からチームに合流した南野も──奇しくも、今回の移籍の準備のためだった──ひとつ上の世代にすんなりと溶け込んだ。2列目のポジション争いに加わってくることを、はっきりと予感させるプレーを見せた。

 2016年のリオ五輪出場を目ざすチームは、これまでのところ結果を残せずにいる。アジアの枠組みのなかで行われた過去2度の国際大会では、いずれもベスト8に終わった。同一クラブから招集できる選手の人数に制限があったとはいえ、アジアにおいて絶対的な強さを持つに至っていないと考えるべきだ。

 すでに日本代表へ招集されている選手もいる守備陣に比べると、攻撃陣は物足りない印象がある。クオリティの高い選手が揃っているものの、所属クラブで結果を残している選手が少ない。J1でコンスタントに得点やアシストを記録し、サッカーファンに広く名前を憶えられている選手は、まだ登場していないと言っていい。

 望まれるのは選手個々のレベルアップだ。南野のザルツブルク移籍を支持したいのは、彼の存在がリオ五輪世代を刺激するからである。

 移籍を決断したリオ世代は、南野だけではない。より多くの出場機会を求めて、新たなクラブで新シーズンを迎える選手は数多い。アジア大会でチーム最多の得点を記録した鈴木武蔵も、フランクフルトのトレーニングに参加している。

 リオ五輪のアジア予選は、今年3月からスタートする。クラブという日常における個々のレベルアップが、リオ五輪への道のりに明かりを灯すのだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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