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【コラム】戸塚啓

“遠藤&今野”招集の意図

[ 2014年11月7日 05:30 ]

W杯ブラジル大会以来、日本代表に招集された遠藤保仁
Photo By スポニチ

 そういう選択肢もある、という招集である。日本代表のハビエル・アギーレ監督が、11月のテストマッチに遠藤と今野を呼んだ。

 所属するガンバは優勝争いを演じており、彼らはその中心にいる。クラブでのパフォーマンスは、W杯ブラジル大会前よりも上向いているぐらいだ。

 4年後へ向けて新たなスタートを切ったなかでベテランを呼び戻すのは、日本にはなじみにくい考え方かもしれない。ただ、代表チームの戦力と成り得るレベルを維持しているのであれば、時間的な区切りだけを理由に選考対象から除外するのはもったいのも事実だ。18日に対戦するオーストラリアにも、34歳のブレシアーノとケーヒルが選ばれている。

 このタイミングで遠藤と今野がリストアップされたことは、若手や中堅への強烈なメッセージにもなる。ポジションは与えられるものではなく奪い取るものという競争原理を、広く再確認させる。W杯ロシア大会までの4年という「線で新戦力を発掘し、なおかつチームを強化していくのは必要だが、公式大会という「点を若手の成長の機会とするのはどうかと思う。来年1月のアジアカップには、17年に行なわれるコンフェデ杯の出場権がかかっている。計算できる戦力としてベテランを加えるのは、そういう意味で選択肢のひとつである。

 ザックのもとで主力を務めた選手を呼び戻すなら、システムも4-2-3-1にしたらどうか。アギーレの4-3-3では、香川をインサイドハーフで起用する苦しみが生じている。今野はボール奪取力に長けているが、彼の能力がアンカーに最適とは思えない。なじみの選手が親しんだシステムでプレーすれば、時間の無さは解消できる。遠藤と今野だけでなく、長谷部と内田もアギーレ指揮下では一度もプレーしていない。たとえば、内田、長谷部、岡崎で右サイドを構成すれば、長く培ってきたコンビネーションをそのまま生かすことができる。「勝ちにいく」のであれば、それぐらいの割り切りがあってもいいはずだ。少なくとも、4-3-3と4-2-3-1の併用は考えてもいい。

 いずれにしても、4年後を見据えた新戦力の発掘はひとまず棚上げされた。結果重視の選考で成果をあげられなければ、批判は免れない。ザックのチームがどれだけの準備期間でアジアカップを制したのかを、アギーレは知っておくべきである。(戸塚啓=スポーツライター)

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