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【コラム】戸塚啓

強い、速い「湘南スタイル」 アギーレ監督が求める人材も

[ 2014年9月26日 05:30 ]

<京都・湘南>J1昇格を決め、コーチ陣と抱き合って喜ぶチョウ・キジェ監督(右)
Photo By スポニチ

 強い。速い。J2湘南ベルマーレが、史上最速でのJ1昇格を決めた。2009年、2012年に続く3度目の昇格だけに、J1復帰と言ったほうがいいかもしれない。

 ここまで33試合を戦って、黒星はわずかにひとつである。このところは引き分けが増えていたが、ホーム、アウェイを問わずに湘南の良さを消そうとしてくるチームが多いなかで、着実に勝点を積み上げていったのは評価できる。

 圧倒的なまでの運動量をベースに、攻撃にも守備にも多くの選手が関わるサッカーは、『湘南スタイル』として定着している。かといって、スタイルに自己陶酔するところはない。就任3シーズン目となる今季開幕前に、チョウ・キジェ監督はこう話している。

 「勝ち負けという結果が出るのに、スタイルを貫いたからそれでいいという考えはおかしい。スタイルが居心地の良さにつながってはいけない」

 J1で戦った2013年シーズンも、彼らのスタイルは評価されていた。「降格するのがもったいない」との声も、多方面から聞かれた。

 それでも、「まだまだ勝負に対して緩かった。そんなつもりはなかったが、結果的にはそうだった」という反省が、チョウ・キジェ監督の胸に残った。

 1年でのJ1復帰はもちろん、J1に定着できる地力をつけるために、チョウ・キジェ監督は「過去最強の湘南を作ろう」と選手に問いかけた。指揮官の言葉に選手が共鳴し、スタイルを磨いてきた結果が、9試合を残しての2位以内確定につながったのである。

 湘南スタイルの魅力は、「チャレンジの多さ」にある。ドリブルで仕掛ける。相手の間でボールを受ける。相手の嫌なところへ入っていく。ルーズボールに果敢に食らいつく。ポジションに関係なく、誰もが攻撃にも守備にも絡む。チームを代表してピッチに立つ責任を、目の前に転がるボールへの執念として示す。もちろん、最後まで足は止めない。

 3-4-3を基本布陣としつつ、高い流動性を秘めるこのチームには、フィードに優れた左利きのセンターバックがいて、ボールを奪い取る力に長けたアンカータイプのMFがいて、激しくアップダウンできるサイドアタッカーがいる。長身のターゲットマンはブラジル人だが、そのほかのポジションでは日本人選手が躍動している。

 日本代表のハビエル・アギーレ監督が求める人材は、ここにもいる。(戸塚啓=スポーツライター)

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