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【コラム】戸塚啓

Jリーグ再開 たくましさと厳しい視線を

[ 2014年7月25日 05:30 ]

<甲府・C大阪>南野(中央左)に対して試合終了後、怒りを表すC大阪・フォルラン(中央右)
Photo By スポニチ

 スーパープレーが連発した。7月23日のJ1リーグである。試合中継とハイライト番組をテレビで観ていたら、「スーパー」という言葉を何度も聞いたのだ。

 アナウンサーや解説者が「スーパー」とか「素晴らしい」と表現したプレーに、僕は必ずしも共感できなかった。誰もがスーパーと感じたのは、仙台対名古屋戦のレアンドロ・ドミンゲスの右足ボレーくらいではなかったか。

 番組を盛り上げる意図は、もちろんあるだろう。僕自身も放送席に座ることがあり、良かったプレーには言葉を費やす。「できるだけポジティブに伝えたい」と、制作側から言われることもある。

 すると、自分で考えている以上に大げさな表現を使っていることがある。ゲームの状況とコメントが極端にずれないように、話を急いでまとめるときも、使い勝手の良い言葉を選びがちだ。「素晴らしい」は、その上位に食い込んでくる。

 伝える側の状況に思いを寄せつつも、僕はやはり違和感を覚える。「それがスーパーなプレーなら、ワールドカップはスーパーなプレーのオンパレードになってしまう」と突っ込みたくなるのだ。

 局面が打開されたり、得点が生まれたりした理由を探せば、「素晴らしい」技術や判断に漏れなく辿り着く。ただ、そのなかには世界的に見ると「できて当たり前」のプレーや、「できなければ国際舞台では通用しない」プレーもある。Jリーグの物差しでは「スーパー」でも、騒がれることのないプレーが。

 ワールドカップのグループステージ敗退の影響として、Jリーグの人気後退が懸念されている。そもそも人気沸騰だったわけでもないが、柿谷曜一朗、原口元気、田中順也といった「個」の欧州流出もある。どうにかしてJリーグを盛り上げなければ、という思いはサッカー関係者に共通するものだろう。

 しかし、ワールドカップ後の低迷を危惧する以前に、Jリーグ勢はACLのベスト8にも進出できていない。アジアを勝ち抜けなくなっている現実を、忘れてはいけないだろう。

 Jリーグの優勝争いが混とんとするのも、ACLの出場クラブが過密日程に苦しむことと無関係ではない。ワールドカップの戦いぶりに照らせば、Jリーガーはもっともっとたくましくならなければいけないはずだ。

 我々はもっと厳しい視線で、Jリーグと向き合う必要がある。結果を残した試合後にも、選手が飢えを覚える──そんな雰囲気作りがJリーグのレベルを少しずつでも押し上げ、ひいては日本代表の強化へつながっていくと思うのだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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