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【コラム】戸塚啓

期待値高い本田 必要なプラスアルファとしての個性

[ 2014年2月7日 05:30 ]

ACミランの本田
Photo By 共同

 期待値は相当に高いのだろう。ACミランにおける本田圭佑である。

 2月2日のトリノ戦を伝える現地報道は、どれも本田に厳しい。日本のメディアがシビアな論調をことさらに強調しているのかもしれないが、それにしてもヒステリックな印象さえある。

 本田のプレーをテレビで観ているかぎり、僕自身はそれほど悪いとは感じていない。ワンタッチで攻撃に変化をつけたり、キープ力を生かして数的優位を作り出したりと、それなりに特徴を発揮している。

 後半終了間際には、パッツィーニからのパスをワンタッチでさばき、カカへ絶妙なスルーパスを通している。カカが相手DFに潰されたことで、フィニッシュにはつながらなかったが。

 1月初旬の加入から、カップ戦を含めて週2回のペースでゲームを消化してきた。トレーニングはリカバリー中心だろう。戦術的な摺り合わせやコンビネーションの構築は、実戦へ持ち込まれてしまう。しかも、監督が交代したばかりである。

 ここ2試合は、4-2-3-1の右サイドで起用されている。CSKAでもプレーしたポジションだ。トリノ戦のパフォーマンスは、当時と比べても平均的水準といったところである。

 それでも、酷評されるということは──。

 イタリアはロシアより評価基準が高い、ということである。CSKAと同レベルのプレーでは、周囲を納得させられない。ミランのようなビッグクラブで、それも背番号10を着けてプレーするということは、そういうことなのだ。

 自らを取り巻く状況を、本田は理解しているに違いない。これから何をやっていかなければならないのかも。そういう意味で、一番冷静なのは彼だと思う。リーグ戦でゴールがほしいのは確かだ。

 フェンロからCSKAへの移籍がスムーズに運んだのは、国内リーグデビュー戦で決勝ゴールを叩き出し、直後のチャンピオンズリーグでも直接FKを叩き込んだことが大きかった。

 攻撃的なプレーヤーである以上、ゴールこそが評価に直結するのは間違いない。ミランのチーム状況を考えても、リーグ戦で4試合連続無得点は批判の導火線になる。

 セードルフ監督が示す戦術のなかで、戸惑いがにじむようなところはない。ゲーム中の応用力はそもそも高い。試合の流れが求めるプレーを、素早く察知できるタイプだ。

 あとは、プラスアルファとしての個性を発揮できるか。トリノ戦の後半はタッチライン際へ張り出す時間帯が長く、プレーエリアが限定的となった。それがチーム戦術だとしても、一歩先を求めなければ本田がピッチに立つ価値は薄れてしまう。彼にしかできないプレーを見せることで、周囲を納得させていくのだ。もちろんそれも、彼は理解しているだろうが。(戸塚啓=スポーツライター)

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