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【コラム】戸塚啓

ベルギー対コロンビアを見て カウンターを放つことでポゼッションが生きてくる

[ 2013年11月15日 05:30 ]

<ベルギー0―2コロンビア>先制弾を決めたコロンビア代表のFWファルカオ
Photo By AP

 ブリュッセルの空港から一歩足を踏み出すと、ひんやりとした空気がコートの隙間から肌を刺した。こちらは11月14日の夜、アスファルトがうっすらと濃い。1時間ほど前から、冷たい雨が道路を打ちつけている。

 ヨーロッパでは明日15日に、W杯予選プレーオフの第1戦が開催される。すでにブラジル行きを決めているベルギーで、プレーオフの熱を感じるのは無理があるのだが、ホテルに到着してテレビを点けると、スタジアム独特の音が聞こえてきた。ベルギーとコロンビアのテストマッチが、生中継されていた。

 会場はブリュッセルだ。一日早く出てくれば良かった、との後悔が頭をもたげる。いや、空港から直接スタジアムへ迎えば、時間的には何とか間に合っていただろう。計画性の無さが歯痒い。

 前半20分過ぎから慌てて追いかけた試合は、ホームのベルギーが主導権を握っていた。少なくともボール支配率では上回っていたし、前半のうちに二度の決定機をつかんでいる。ところが、1トップのベンテケがどちらも生かしきれない。ペナルティーエリア内で倒されたシーンまもあったが、主審はPKを与えることに関心をしめさなかった。

 コロンビアはほぼノーチャンスで前半を終えたが、先制点を奪ったのは彼らだった。後半立ち上がりの6分、最終ラインの背後をフリーで抜け出したファルカオが、GKもかわしてゴールネットを揺らす。この試合最初の決定機を、得点につなげたのだ。背番号10を着けるJ・ロドリゲスにフリーでボールを運ばれた時点で、ベルギーの守備陣にできることは少なかった。

 次に得点を奪ったのもコロンビアだった。敵陣左サイドから、J・ロドリゲスが直接FKをゴール前に供給する。ファーサイドのペレアがゴール前に折り返し、途中出場のイバルボが蹴り込んだのだった。16分の追加点は大きな価値を持ち、コロンビアは2-0でベルギーを退けたのだった。

 サッカーの得点を大別すると、ポゼッション、カウンター、セットプレーの3つになる。ボール支配率で劣りながら勝利をつかんだコロンビアは、現実的かつ理想的な試合運びをした。

 日本代表の戦い方について、しばしば「ポゼッションか、カウンターか」といった議論が巻き起こる。ザックが率いる現在のチームに、カウンター主体のサッカーはそぐわない。守備に軸足を置くならば、違うキャスティングをするべきだ。

 そもそも、どちらかひとつを選ぶ必要はないのだ。ケース・バイ・ケースで、3つを使い分ければいいのである。ザック指揮下で2度対戦したブラジルにしても、カウンターを効果的に織り交ぜている。ポゼッションだけで押し通すのは無理というものだ。

 オランダ、ベルギーという格上相手に、理想と現実の折り合いをつけられるか。カウンターを放つことでポゼッションが生きてくることを、そろそろ真正面から見つめてほしいのである。(戸塚啓=スポーツライター)

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