×

【コラム】戸塚啓

ACLに見るJリーグのレベルダウン

[ 2013年5月12日 06:00 ]

 リーグ戦のほぼ3分の1を消化したJ1リーグで、大宮アルディージャが首位に立っている。ACL出場の4チームは消化試合数が少ないものの、4チームのなかで最上位の浦和レッズが勝利しても大宮に勝点で及ばない。堂々の首位堅持である。

 昨シーズンの9月を出発点とするリーグ戦の不敗記録は、5月6日の広島戦で「21」までのびた。今シーズンだけに限れば不敗記録は「10」だが、シーズンをまたいだ記録更新がこのチームの安定感を際立たせる。

 昨年6月のベルデニック監督就任をきっかけに守備の再構築に着手し、並行してズラタンとノヴァコヴィッチを相次いで獲得した。シーズン終了後のオフには、神戸へレンタルバックしたCB河本のポジションに、東京ヴェルディから高橋を補強した。FC東京へ移籍した東の代役は見つけられなかったが、同じロンドン五輪世代のFW富山を獲得した。

 しっかりと手順を踏んで地力をつけてきたわけだが、それにしてもJ1残留争いの常連である。新クラブハウスの完成がピッチの内外に波及効果を呼ぶとしても、リーグを牽引する存在になるとは考えにくかった。

 シーズンの始動にあたってクラブが「勝点53」を目標に掲げると、懐疑的な視線が寄せられたものだった。僕自身もそのひとりだった。

 大宮が強くなってきた一方で、競争力が落ちているクラブが見受けられる。もっと言えば、リーグ全体のレベルが低下している。数年前から続くJ1の混戦は、今シーズンの大宮のような予想外の躍進は、各チームの戦力が低いレベルで均一化していることに理由を求められる。

 Jリーグのレベルダウンは、ACLによって明らかになった。

 国内リーグとの掛け持ちでスケジュールが過密になり、長距離の移動が疲労に追い打ちをかける。ピッチ内ではJリーグよりコンタクトプレーが激しく、主審によって異なる判定基準が待ち受ける。様々なエクスキューズがあげられたが、今年はついに1チームしかベスト16へ進出できなかった。現在のレギュレーションになった2009年以降で、最低の成績である。

 判定基準がJリーグとは異なるとしても、ホイッスルを吹いているのはワールドカップ予選などでお馴染みの主審だ。そのなかでも、日本代表は結果を残している。グループステージ突破を妨げた理由としては、説得力に乏しい。

 過密日程にしても同様だ。韓国も中国もタイも、Jリーグとほぼ同じスケジュールを消化していた。こちらもJリーグ勢を擁護する材料にはならない。

 低迷するJリーグ勢と入れ替わるように、中国は2チームをベスト16へ送り込んだ。09年以降では初めてである。「戦国時代」や「群雄割拠」などと呼ばれるJ1の混戦ぶりが、虚しさを誘ってくる。(戸塚啓=スポーツライター)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る