【コラム】戸塚啓

五輪出場権の重要性 波及効果は大きい

[ 2024年4月25日 11:30 ]

<U-23アジア杯>21日のオーストラリア戦でスタンドを埋めるカタールサポーター(撮影・小海途 良幹)
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 難しい試合をくぐり抜けるほど、手にするものは大きい。

 パリ五輪の最終予選を兼ねたU-23アジアカップに出場しているチームが、25日に準々決勝に挑む。対戦相手はカタールだ。

 グループステージの3試合は、スタジアムに空席が目立った。中国との初戦は、公式入場数が390人だった。中東のUAEとの試合は2000人を超えたが、それでもアウェイの雰囲気に包まれたわけではなかった。

 カタール戦は違う。彼らはホスト国だ。グループステージの最初の2試合には、8000人を超える観衆が集まった。日本は“アウェイど真ん中”で戦うことになるだろう。

 グループステージ第3戦で韓国に勝っていれば、カタールとの対戦を避けることができた。大岩剛監督のターンオーバーに否定的な意見もあったが、韓国戦からカタール戦までは中2日しかない。負けられない準々決勝に備えて主力を休ませたのは、五輪の出場権獲得からの逆算で考えれば妥当だったとも言える。

 グループ首位で準々決勝へ進出したとしても、インドネシアが相手だ。元韓国代表MFのシン・テヨン監督はU-20、U-23、フル代表で采配を振るっており、一貫性のあるチーム作りが行なわれている。今回のチームには、すでにフル代表で国際Aマッチに出場している選手も含まれている。侮ることのできない相手だ。

 五輪の出場権獲得には、様々な波及効果が見込める。大岩監督と選手たちが国際経験を積む、日本サッカーの国際的なプレゼンスを高める、といったことはもちろん、国民的関心事の五輪に出場することに大きな意味があるのだ。

 日本人選手が出場する種目は、ライブと録画でほぼもれなく放映される。試合中継だけでなく、情報番組でも取り上げられる。Jリーグや日本代表に興味のない層へ、サッカーに触れてもらう好機だ。

 パリ五輪にはバスケットボール男子が、48年ぶりの自力での出場を決めている。ハンドボール男子も、36ぶりに予選を突破した。08年を最後に自力での出場がなかったバレーボール男子も、出場権をつかんでいる。

 こうした競技が五輪の舞台に立つなかで、サッカーが出場権を逃すこことになったら──興味を抱いてもらったり、関心を寄せてもらうことにおいて、他競技に遅れを取ってしまう恐れがある。五輪後のJリーグの観客動員にも、良くない影響が及んでしまうだろう。JリーグではなくBリーグに行こう、Vリーグに行こう、という人が増えてもおかしくない。

 何よりも、子どもたちが「自分もサッカーをやりたい」、「代表選手になりたい」といった目標を抱くきっかけを失ってしまう。未来への種まきが、滞ってしまうのだ。

 今回のU-23アジアカップは、FIFAのインターナショナルマッチデイではない時期に開催されている。このため、ヨーロッパでプレーする選手を漏れなく招集できていない。

 カタールに勝っても、準決勝でイラクかベトナムが待ち受ける。状況は厳しいが、それだけに、勝てば大きな自信になる。10年後、20年後の日本サッカーのためにも、出場権をつかんでほしいのだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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