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【コラム】西部謙司

戦術メリーゴーランド

[ 2015年3月20日 05:30 ]

代書の代表メンバー発表会見を終え笑顔を見せるハリルホジッチ監督
Photo By スポニチ

 シーズン中に次々と監督が交代する「監督メリーゴーランド」になっているチームは、たいがい上手くいっていない。勝てないから監督を代えているわけだが、代えすぎるとチームの土台が固まらずに混乱を増すだけになってしまう。

 2010年W杯南アフリカ大会の後、ザッケローニ新監督への期待は攻撃力のアップだった。岡田前監督のチームはよく守れていた半面、攻撃は物足りなかったからだ。ザッケローニ監督は注文どおり攻撃力を伸ばし、珍しく決定力不足があまり話題にならない4年間を過ごしている。そのかわり、強豪相手にはいつも4失点するなど守備は最後まで安定しなかった。

 後任のアギーレ監督は守備時に4-1-4-1になる現実的なシステムを軸にした。日本選手の特徴を最大限に生かすための「自分たちのサッカー」ではなく、相手との力関係を考えて現実的に戦おうという姿勢がみえた。しかし、アギーレ監督は道半ばまでいかずに退任、新たにハリルホジッチ監督が就任している。

 リール、パリ・サンジェルマン、コートジボワール、アルジェリアなど特徴も立場も異なるチームを率いて実績を残している監督で、W杯ブラジル大会での采配をみても多彩で柔軟性に富んでいた。では、ハリルホジッチ監督への注文は何だろう。

 アギーレ路線の踏襲だろうか?いや、監督が違えば当然サッカーは違ってくる。では、戦術も強化策も新監督にお任せなのか?それでは技術委員会の存在意義はない。フリーで良さそうな監督を間に合わせで連れてきたわけではないだろう。

 W杯ブラジル大会の分析から得た結論は何か。ザッケローニのポゼッション+プレッシングで勝てなかった大きな要因はカウンターに弱かったからだ。このスタイルでこの弱点は致命的といっていい。では、カウンターされないように堅守速攻路線ならいいかといえば、それはそれで別の弱点を抱えるだけである。ポゼッションの時代は終わり、ハードワークとか縦に速いサッカーの時代ともいわれているようだが、それも表面的な議論にすぎない。サッカーの戦術はファッションではない。

 ポゼッションを軸にしたときの問題点、カウンター狙いのときの問題点、それぞれを分析したうえで強化に反映しなければならない。1つの戦い方で結果が出ないから安易に別のやり方では「戦術メリーゴーランド」である。

 ハリルホジッチ監督は柔軟で何でもできると思ったら間違いだ。何でもできるは何もできないと変わらない。新監督は日本選手の特徴と世界での立ち位置を勘案し、自分の任期中に最大限の結果を得られるように努力するだろう。しかし、彼が去った後も日本代表は続くわけだ。もし、新監督のやり方がアギーレと何の共通項もなかったら、技術委員会は日本サッカーをハンドリングできていないということになる。(西部謙司=スポーツライター)

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