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【コラム】西部謙司

日本に推定無罪はない?

[ 2014年12月26日 05:30 ]

12月18日記者会見で質問に答える日本サッカー協会の原専務理事
Photo By スポニチ

 アギーレ監督が告発されたことで日本サッカー協会は対応に追われている。アジアカップの指揮はアギーレ監督が執ることを明言したものの、その後は状況次第というところだろうか。

 試合買収に関与した疑いで告発されたといっても本格的な捜査はこれから。告発段階で解任は常識的にありえない。同じく告発の対象となった選手たちも解雇されていない。

 今後、告発が受理されても裁判を経て判決が出るまでには相当の時間がかかるはず。それまでアギーレ監督が指揮を執ることに法的な問題はない。それでも協会が早期に解任を決断するとしたら3つのケースが考えられる。

 (1)アジアカップの成績、内容がとうてい満足できない場合
 (2)スペインの裁判所からの呼び出しなどで監督業務に重大な支障がある場合
 (3)スポンサー離れで代表の活動費に重大な影響が生じると判断した場合

 競技面での解任はともかく、(2)のスケジュールがまだよくわからない。ヨーロッパでは暴行容疑などで裁判になってもプレーを続けている選手はいた。一番アタマの痛い問題は(3)のスポンサー離れだと思う。

 仮に裁判になった場合、将来有罪判決を受けるかもしれない人物が日本代表の監督を続けることに違和感を持つ人は出てくるだろう。今回のケースはすっかり 「八百長疑惑」となってしまったが、八百長というより買収であり、買収とわかっていて止めなかった疑惑である。スペインでは初のケースだそうだが、これまでもこの手の不正はゴマンとあったはず。急に不正との戦いを開始しただけである。

 しかし、そうした状況説明よりも多くの報道が糾弾調になっているのは、代表チームには一点のケガレもあってはならないという潔癖症的な思いがあるからではないか。イタリア代表のようにスキャンダルをエネルギーに変えてしまうぐらい八百長慣れするのもどうかと思うが、過度に反応しすぎるのもいかがなものか。少なくとも「疑わしきは罰する」ではダメだ。しかし、潔癖と利にさといのが我々の国民性なら流れは変わらないのかもしれない。(西部謙司=スポーツライター)

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