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【コラム】西部謙司

ドイツの完成度

[ 2014年7月11日 05:30 ]

DFのスピード不足の弱点をカバーしているGKノイアー
Photo By AP

 ブラジルが信じられない7失点で敗退した。ドイツは着々と得点を重ね、前半で5-0と試合を決めてしまった。

 今大会のブラジルは、立ち上がりの勢いで得点できないと、組み立てが弱いので苦戦する傾向があった。ドイツ戦では逆に11分に先制されて勢いを消され、組み立てようとしてもドイツのプレッシャーを前にミスを連発した。切り札だったネイマール、守備の重鎮でキャプテンのチアゴ・シウバの欠場は痛かったが、彼がいれば勝てたと言えるような内容ではない。単純にドイツのほうが優れたチームだった。

 バイエルン・ミュンヘンを中心とした編成は、前回大会でバルセロナを軸としていたスペインと似ている。クラブチームのコンビネーションをそのまま使えるので、パスワークに安定感があり、崩しのアイデアも共有できているのはアドバンテージだ。

 ドイツのパスワークはバイエルンほど複雑でも画期的でもないが、W杯ブラジル大会では最も構成力のあるチームだ。もし、このまま優勝するとしたら、前回のスペインや前々回のイタリアと同様に、スーパースター不在のまま世界チャンピオンとなる。

 かつてはW杯で優勝するにはスーパースターの働きが不可欠といわれていたものだが、最近はチームの総合力が決め手だ。クリスティアーノ・ロナウドがいてもポルトガルは1次リーグ敗退、スター選手ゼロのコスタリカがベスト8だった。

 今大会のドイツは攻撃のタレントは豊富だがDFには不安があった。カウンターを受けたときのスピード不足が弱点なのだが、GKノイアーの活躍でカバーしている。ノイアーの高いポジショニングとDF並のタックルの技術やフィード力は、これからのGKが目指す理想像だろう。(西部謙司=スポーツライター)

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