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【コラム】西部謙司

マダムはサッカー監督

[ 2014年5月12日 05:30 ]

マンチェスター・ユナイテッド監督就任が噂されているファンハール・オランダ代表監督
Photo By AP

 ヨーロッパサッカーは終盤戦、来季の監督人事のニュースも増えてきた。

 マンチェスター・ユナイテッドは6年契約のデビッド・モイーズ監督を解任し、現役選手のライアン・ギグスが今季いっぱいの指揮を執ることに。来季はルイス・ファンハール監督が有力らしい。

 ユナイテッドは監督にとって難しいクラブで、イングランドのリーグ戦最多優勝であるにもかかわらず戦後の優勝監督は2人しかいない。マット・バスビーとアレックス・ファーガソンだけ。どちらもサーの称号を持つ偉大な指導者、2人ともオールドトラフォードに銅像が建っている。バス ビーが辞めた後はその穴を埋めるのにかなり苦労した。ファーガソンの後釜を探すのも簡単ではない。ファーガソンの影響力をどれだけ排除できるかがカギだと思うが、その点でファンハールはいい人選かもしれない。ただ、何もかも壊してしまうリスクもありそうだが。

 ファンハールとは違うタイプの変人監督として有名なマルセロ・ビエルサはマルセイユに行くという。フランスではサッカーの“首都”ともいわれる熱い街だが、最近はライバルのパリ・サンジェルマンに大きく水を開けられていた。補強資金ではカタール資本をバックにつけたパリには及ばないので、ビエルサの“頭脳”を活用しようということだろうか。

 バルセロナはOBのルイス・エンリケと接触中。ジネディーヌ・ジダンはレ アル・マドリードのコーチを辞めて、モナコの監督になるのではという噂である。またW杯が終われば契約の切れる代表監督も多いので、この夏はいろいろと動きがあるだろう。

 フランス2部リーグのクレルモンは初の女性監督、エレナ・コスタを起用する。男子プロチームを率いた女性監督は彼女が最初ではないが、2部リーグは最上位のカテゴリーになるそうだ。キャリアのスタートはベンフィカのユースチーム(男子)で、セルティックのスカウトも経験している。イラン女子代表監督からの転身だが、ずっと女子サッカー界にいた人ではない。

 男子と女子ではスピードもパワーも違う。「女子サッカー」という競技があると考えたほうがいい。だが、監督がプレーするわけではないのでそれは関係 ない。男の監督でも、30年前に現役だった人なら、当時と現在ではスピードも戦術も違っている。

 エレナ・コスタはポルトガル人だが、スコットランドや中東で経験を積み、フランスで監督になった。今季は残り2試合、女性ということで注目されるだろう。女性監督ではなく、ただの監督として扱われるようになれば、やがて女性監督はそう珍しくなくなるかもしれない。(西部謙司=スポーツライター)

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