【コラム】西部謙司

大人の天皇杯決勝

[ 2014年1月2日 05:30 ]

<横浜・広島>優勝し、記念撮影で笑顔を見せる横浜イレブン
Photo By スポニチ

 横浜F・マリノスとサンフレッチェ広島の天皇杯決勝は、成熟したチーム同士の大人のファイナルだった。

 横浜が前半に2ゴールをゲットし、広島は何とか追いつこうと反撃、何度かチャンスもつかんだがスコアは動かなかった。リーグ戦で最後まで優勝を争った同士の対決は先制点がカギだったと思う。

 広島は守備と攻撃でフォーメーションが変わる独特のスタイルだが、攻守のコントラストが鮮明なところに特徴がある。守るときは9人が引いて人垣を作ってしまう。攻めるときはじっくりとパスを回し、こちらも敵陣に人数を投入する。少ない人数での攻守があまり発生しない。

 広島に守備を固められるとなかなか点をとるのは難しくなる。守備は不思議なもので、時間が経過すると「守り慣れ」が生まれる。広島の守備が本当に固まってしまう前に横浜が先制したことで試合が動いた。得意のCKから追加点をとったことが、より決定的だった。広島は攻撃するしかなくなった。これで横浜は非常に有利になった。

 なぜかというと、広島の唯一の弱点は攻撃から守備でフォーメーションの移動があるために、どうしても時間がかかってしまうからだ。いったん自陣まで下がりきらないと守備ができない。横浜がボールをキープすれば、広島はとりあえずいったん下がってくれる。横浜は時間を使いながら攻める余裕が生まれ、広島はいったん後退してからの攻撃なのでエネルギーが必要になった。

 横浜は攻めても守っても強く、ベテランの中村俊輔や中澤佑二を中心に試合を読む力が高い。決勝では思い通りのシナリオを描けていた。横浜と広島は、たんにテクニックや体力が優れているのではなくゲームのやり方が上手い。試合巧者同士の駆け引きを堪能できる高度なファイナルだった。

 経験値や試合運びの上手さをご破算にするような、若さとエネルギーのサッカーも楽しいが、今年の決勝はJリーグの成長を示していたと思う。(西部謙司=スポーツライター)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る