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【コラム】西部謙司

Jリーグの人材流出

[ 2013年1月31日 06:00 ]

ユニフォームを手に笑顔の小野(左はデサール強化部長)
Photo By スポニチ

 ヨーロッパでは冬のマーケット期間中に補強が行われた。日本からもロンドン五輪で活躍した永井謙佑、横浜F・マリノスのFW小野裕二がベルギーのスタンダール・リエージュへ移籍した。

 Jリーガーの欧州クラブへの移籍はすっかり当たり前の出来事になった。小野のケースはJリーグのプレーを評価されたわけで、それだけ欧州各国が日本選手に興味を持ち、情報も持っているということだろう。日本も世界のマーケットに組み込まれているわけだ。

 サッカーの市場はボーダーレスに世界へ広がっている。Jリーグにとって人材流出はマイナスだが、欧州で経験を積んで大きく伸びてくれれば日本代表にとっては悪い話ではない。メリットもデメリットもある。ただ日本がマーケットに組み込まれた以上は是非もない。

 海外移籍に失敗はない、ともいわれる。これは選手の立場での意見で、日本とは違うサッカー、環境で鍛えられるメリットがあるので、たとえメディアで称えられるような活躍ができなくてもマイナスではないという見方だ。一方、Jクラブにとっては成功も失敗もある。高額の違約金をとれれば成功といえるかもしれない。逆に違約金がとれなければ単純に戦力ダウンだ。Jクラブとしては、有望な選手と複数年契約を結んで防衛措置をとりたいところである。

 ところが、移籍しやすいように1年契約を望む選手もいる。海外移籍は若年化の傾向にあるので、Jクラブとしては選手のポテンシャルを見抜いて契約交渉をしなければならない。選手を見る目が問われる。

 海外移籍は選手にメリットもある半面、当然リスクもある。Jリーグの環境は決して悪くない。そもそも若手Jリーガーにオファーが増えているのは、それだけリーグのレベルを認められているからだ。海外に行かなければ上達できないとはかぎらない。違約金がタダならほしいという欧州クラブは、選手をその程度にしか見ていないかもしれないのだ。

 選手もJクラブも、いかに高く売るかを考える時期に来ているのではないか。(西部謙司=スポーツライター)

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