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【コラム】西部謙司

サッカーの流れと日本

[ 2012年11月9日 06:00 ]

マンチェスター・ユナイテッドに所属する日本代表MF香川真司
Photo By 共同

 ヨーロッパでプレーする日本人選手が増えた。日本代表も気がつけば大半が「海外組」になっている。フランス、ブラジルと対戦した遠征はいろいろと収穫があったが、今後はアウェーでの試合も組みやすくなるのではないか。

 世界のサッカーの流れは、かつてないほど日本にとって追い風になっている。

 最も資金力があり、世界中から人材を集められるプレミアリーグはサッカーの見本市で、そこで何が起きているかは、サッカーがどう動いているかの指標になる。今季、マンチェスター・ ユナイテッドは香川真司を獲得した。昨季王者のマンチェスター・シティにはシルバとナスリがいる。チェルシーはオスカルとアザールを獲得してマタと組ませた。アーセナルの中盤はウィルシャー、アルテタ、カソルラのトリオである。

 強豪クラブが買い求めた人材に大男は1人もいない。全員小柄で俊敏、テクニックに優れたMFだ。

 90年代のMFには頑健な選手が求められた。FWからDFまでが30メートルに収まり、狭い地域でボールを奪い合うゲームでは、フィジカルコンタクトに強い選手が必要だったからだ。ところが、21世紀に入ると陣形は少し間延びした。あんまりコンパクトにやると、一発で裏をつかれる危険が増大したからだ。アンリやシェフチェンコのようなFWに裏をとられたらひとたまりもない。ディフェンスラインの位置は下がり、コンパクトネスは緩和された。攻撃側に有利なオフサイド・ルールの微修正も拍車をかけた。

 中盤に、ほんの少しだが息をつく隙間ができた。すると、そのわずかな隙間でプレーできるクリエイティブな選手が復活した。シャビ、イニエスタ、メッシの成功をみて、小柄で俊敏なクリエイターの需要が一気に増大する。

 いま、日本は重要な供給源になりつつある。香川が成功したドイツには、もともとこの手の選手層が薄かったこともあって、ちょっとした日本人ブームになっている。この流れもそのうちに変わるのだろうが、当面は日本選手が活躍しやすい状況は続くだろう。(西部謙司=スポーツライター)

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