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【コラム】西部謙司

日本選手の強度

[ 2012年6月14日 06:00 ]

<オーストラリア1―1日本>前半、相手に囲まれる香川
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W杯アジア最終予選 オーストラリア1―1日本
(6月12日 ブリスベーン)
 引き分けのオーストラリア戦は惜しいゲームだった。アウェーで引き分けは結果としては悪くないが、怪しげなPKさえなければ勝っていた。

 アジアカップ決勝と比べると、日本のペースで進む時間帯が長かった。相手の中盤の軸であるブレシアーノが早々に負傷退場となったせいもあるだろうが、いくつかの点で明らかな進歩があった。

 まず、深い位置からのカウンターアタックができていた。オーストラリアはロングボールとハイクロスのチームなので、日本の攻撃開始地点は深くなる。そこから相手陣内へ運べないと波状攻撃を食らう。06年W杯のときが典型だが、優勝したアジアカップでも押し込まれる時間は長かった。それが、今回は効果的なカウンターを繰り出していた。

 ポゼッションしたときも、攻めあぐむ場面が少なかった。サイドからのハイクロスがほとんど効果がない相手に対して、ペナルティーエリア内へパスを通してチャンスを作れていた。

 そして、今回の日本はフィジカルコンタクトでさほど不利にならなかった。もちろん、それは相手の最大の長所なので、日本が優位だったわけではない。ケーヒルやアレックスへの長い縦パスを切断できない場面も目立っていた。とはいえ、本田や前田が前線でキープしたり、今野が敏捷性を生かしてパスをカットしたり、香川が当たられる前にかわすなど、相手のパワーに負けない、あるいは当たられずにプレーすることができていた。

 海外組がパワフルな守備に慣れているのは大きい。Jリーグに欠けているのは、まさにその点なので、海外組の増加が代表にもたらした効果は軽視できない。ただし、彼らも元はJリーガーであり、パワーを武器にしているタイプでもない。海外組の経験は大きいが、逆にいえば、技術の精度さえあれば慣れの問題にすぎないということだ。(西部謙司=スポーツライター)

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