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【コラム】金子達仁

大迫と小林祐の台頭は、確実にサウジを悩ませる

[ 2016年11月14日 12:20 ]

<日本・オマーン>後半49分、A代表初ゴールを決める小林祐

 この試合を見て、来るべき決戦を占えと言うのは、公開スパーリングを見て世界タイトルマッチの行方を予想しろ、と求められるに等しい。

 正直なところ、わたしにはまったくわからない。

 この試合における自分たちのすべてがサウジアラビアに筒抜けになってしまうことは、当然、ハリルホジッチ監督はわかっている。となれば、ここで見せるものはあくまでもワン・オブ・ゼムであると匂わせなければならない。もちろん、サウジアラビアの側も、この日の日本のメンバーが3日後もそのまま来るとは思っていまい。ある種、タヌキの化かしあいである。

 ただ、サウジアラビアの立場に立ってこの試合をみると、想定していた以上に対処すべき案件が増えたのではないか、という気もする。岡崎のダミーとして黙殺するには、2ゴールをあげた馴染(なじ)みのないストライカーの落ち着きぶりは危険すぎる。最後の1点を右足でたたき込んだボランチの選手は、本来左利きではなかったのか?そもそも、彼らは自分たちの試合に出てくるのか?

 とはいえ、サウジとしては胸をなで下ろした部分もあったはず。この日のオマーンにまったく覇気がなかったため、結果として日本が大勝する形とはなったが、ザッケローニ時代、アギーレ時代の流れるようなパスワークは依然として影を潜めたままだった。この日本であれば、“一人一殺”の精神で臨めばなんとかなる。わたしがサウジの監督であれば、きっとそう考える。

 この日の日本が、掛け値なしに本当の日本なのであれば。

 だが、そんなはずはない。スパーリングはあくまでもスパーリングであって、そこから本番の試合を占うのは、今週月曜日の段階で米国大統領選挙の行方を予想するよりもはるかに難しい。振り返ってみれば、ハリルホジッチ体制になってからのベストゲームは、本番のW杯予選でシンガポールと痛恨の引き分けを演じてしまう直前のテストマッチ・イラク戦だった。同じことが起こる可能性も、あるいはまったく逆のことが起こる可能性も十分にありうる。

 それでも、大迫のゴール前での落ち着きぶりは頼もしかった。いまの彼には、アジアのDFの動きが格段に遅く見えているのではないか。所属するレスターで出場機会が減ったせいか、終盤の決定機で慌てたそぶりを見せてしまった岡崎に比べると、その違いは明らかだった。

 もっとも、その岡崎にしても、この試合でリハビリをこなせた可能性は十分にある。チームとしての連動性は期待できずとも、相手が警戒するタレントの人数は確実に増えた。4―0というスコアに浮かれるつもりはさらさらないが、本番を前に、悪いスパーリングでなかったことは間違いない。それが、どんな結果を生むかはともかくとして。(金子達仁氏=スポーツライター)

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