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【コラム】金子達仁

「なぜGK西川」監督のサッカー観見えない

[ 2016年10月14日 06:00 ]

<オーストラリア・日本>前半、相手のFKをファインセーブする西川
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 GKには監督のサッカー観が表れる、と思っている。

 先月末、バルセロナのGKテア・シュテーゲンが重大なフィードミスを犯し、チームは手痛い1敗を喫した。当然、メディアやファンはドイツ人GKを激しく非難し、その矛先は彼を起用したルイス・エンリケ監督にも向けられた。だが、監督は昂然(こうぜん)と言い放った。

 「GKにも高いフィード力を求めるのがバルサのサッカー。ああいうミスが起こるのも織り込み済みだ」

 そもそも、望むのであれば世界のどんな選手でも獲得することが可能に思えるバルサが、国際的にはほぼ無名に近かったボルシアMGのGKに触手を伸ばしたのは、「フィード能力だけはノイヤーをも凌(しの)ぐ」との評価があったからだった。たとえミスによって敗れることがあろうとも、それ以上にテア・シュテーゲンのフィード力は勝利に貢献している、とエンリケ監督は胸を張ったのである。

 いまよりははるかにポゼッションを重視していたアギーレ時代、わたしには一つ解せないことがあった。なぜGKは西川ではなく川島なのか――。ポゼッションにこだわる以上、フィード力に優れた西川を使うべきだ、とこの欄で書いたこともある。ただ、それに対してはある代表選手からの反論があった。

 「シューターの立場から見た場合、現状、シュート・ストップの能力は明らかに川島が上。西川のフィード能力はわかった上で、自分でも川島を使うと思います」

 なるほど、と納得した。フィード能力を求めるあまり、肝心のセーブ力の低いGKを重用してしまったことが一因となり、クライフはバルサを追われた。その哲学はいまグアルディオラ、エンリケにもきっちりと受け継がれているが、しかし、GKにはGKとしてやるべきことがあるのも事実である。

 11番目のフィールドプレーヤーとしての役割に重きを置くか。オンリーワンのスペシャリストなのか。監督が何を求めるかで、GKのタイプと役割は変わってくる。

 ここにきて、わたしはハリルホジッチ監督の目指すサッカーがどんなものか、見えなくなってきているが、GK西川を見ているといよいよその思いを強くする。というのも、日本最高のフィード力を誇るGKに、いまの代表は平然とただのクリアをさせてしまっているからである。何の前知識も持たない欧州のスカウトが前日の試合を見たら、フィード力に優れたGKはオーストラリアの方だと思い込んだことだろう。

 なぜ西川は蹴ったのか。彼のフィード力が衰えたから?違う。日本代表が、サンフレッチェやレッズほどには彼につなぐことを求めていなかったからだった。

 ならば、なぜ西川なのか。

 GKには監督のサッカー観が表れる。GKのフィード力を計算しない戦術に西川を当てはめる監督のサッカー観が、わたしにはますますもって、わからない。(金子達仁氏=スポーツライター)

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