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【コラム】金子達仁

「屈辱」感じない姿 J3、22歳以下選抜と同じ

[ 2015年8月10日 05:30 ]

中国戦を1―1のドローに終わり肩を落とす日本代表イレブン
Photo By スポニチ

東アジア杯 日本1―1中国
(8月9日 中国・武漢)
 勝てなかったけれど、内容は悪くなかった――と感じた人がいたとしたら、それはこれまでの2試合があまりにもひどすぎたから、である。

 確かに北朝鮮戦に比べればずいぶんと最終ラインは安定し、韓国戦とは違って自分たちが主導権を握るのだという意志ははっきりと感じ取れた。悪い試合でなかったことは認めよう。

 だから、日本の最終目標がW杯に出場することにあり、この目標さえ果たせれば本大会などどうなってもいい、というのであれば、敵地で世界第2位の経済大国を相手に引き分けた選手や監督に称賛の声を贈ればいい。今大会最下位に終わったチームに。

 試合後、選手たちのコメントを聞いてガックリきた。残念だった?その程度なのか?いくら海外でプレーしている選手がいなかったとはいえ、3試合で1勝もできなかったのである。それを「残念」で済まされてしまっては、こちらも言葉を失ってしまう。ひょっとしたら単にボキャブラリーが貧困なだけなのかもしれないが、わたしが選手たちに感じてほしかったのは「屈辱」だった。海外組がいないから仕方がない、ではなく、いないチャンスを生かせなかった自分に怒り狂っていてほしかった。

 試合前日、ハリルホジッチ監督は「批判するなら自分を。選手は責めないでほしい」と言っていたようだが、なるほど、この結果を平然と受け入れられる選手であれば、周囲が何を言っても仕方がない。

 極めて残念なことに、今大会の日本代表を見ていてわたしはあるチームを思い出してしまった。というより、ほぼ同一に感じられて仕方がなかった。昨年からJ3に参加しているJリーグ22歳以下選抜である。

 キラ星のごとく、とまではいかないものの、名もない選手がほとんどのJ3にあって、彼らはズバ抜けたビッグネームである。まだ大金を手にしている選手は少ないが、アマチュアも珍しくないJ3にあっては環境、収入とも格段に恵まれている。

 ところが、そんな選手たちが揃(そろ)ったチームの成績はどうか。昨年はひどかった。今年もひどい。得失点差はぶっちぎりの最下位で、勝ち点では辛くもブービーといったありさまである。

 手を抜いているのではない。一生懸命やってはいる。けれども、勝たなければ明日のないチームの多いJ3にあって、彼らの戦いはどこか真剣味にかけ、結果、ズルズルと黒星を重ねている。J3発足の際は目玉企画として取り上げられたこのチームだが、ここまでのところ、参加はまったくの無意味だったと断ぜざるをえない。

 今回、東アジア選手権に参加した選手たちの心境は、果たしていかなるものだったのか。J3に参加している選手たちとは根本的に違っていたか。残念ながら、わたしの印象は「ノー」である。(金子達仁氏=スポーツライター)

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