×

【コラム】金子達仁

パラグアイ相手に「グレート」な試合…断言してもいい。日本は強くなった

[ 2022年6月5日 07:00 ]

国際親善試合   日本4-1パラグアイ ( 2022年6月2日    札幌ド )

 黙祷(もくとう)を捧(ささ)げられるとどんな気分になるのか、聞いたことはないし聞くこともできないが、捧げられたのがこの試合だったとしたら、嬉(うれ)しい。わたしがオシムさんだったら、きっと嬉しい。相手は予選敗退国?本気じゃなかった?だとしても、嬉しい。どれだけ厳しめの見方をしても、これは“グッド”を超えて“グレート”な試合だった。

 ほぼすべての選手が素晴らしかった中、まず目についたのは原口の奮闘だった。

 1対1における遠藤の強さはもはや驚きでもなんでもないが、あまりにも原口が素晴らしかったせいで、前半の日本には遠藤が2人いるようですらあった。タフな守りと重戦車のような推進力。それでいながら若いころを彷彿(ほうふつ)させる繊細なタッチをちりばめたプレーは、原口にとっても、代表におけるベストパフォーマンスではなかったか。

 本来であれば、これほど素晴らしい出来の選手をベンチに下げれば、試合のクオリティーはガクッと落ちていてもおかしくないのだが、この日の日本にはいかなるマイナスの変化も見られなかった。わずか半年前、「戦術は伊東だけ」と言われたチームが、である。

 帰ってきた鎌田にも触れなければなるまい。以前、彼について「チート・キャラ」と評したことがあったが、この日の、特に後半に入ってからの鎌田は、対峙(たいじ)した選手からすれば幻、亡霊のように感じられたのではないか。これからは、彼のことを“ファントム”と呼ぶことにしよう。

 ドイツのキッカー誌は、年に一度、ブンデスリーガに所属する全選手のランク付けをする。最高は「世界」クラスで、次が「国際」クラス。具体的な名前をあげると、ドイツ代表GKのノイヤーは「世界」クラスで、スイス代表のゾマーは「国際」クラスにランクされる。

 最新のランクをわたしは見ていないが、この日の鎌田であれば、「国際」と「世界」の間ぐらいの選手と評価されてもおかしくない。後半の出来を、90分にわたって維持できるのであれば。

 少し評価が難しいのは堂安か。素晴らしいチャンスメークを見せた一方で、PKを蹴る機会まで与えてもらいながらのノーゴール。ほとんど好機のなかったパラグアイがワンチャンスを得点につなげただけに、どうしても物足りなさが残る。あとは、この日の出来を本人がどう考えているか、だろう。もし満足しているようなら……たぶん、W杯でもゴールはない。

 評価が難しい、という次元を超えて心配になってくるのが久保である。期するものはあったのだろうが、周囲とまったく噛(か)み合っていないようにわたしには見えた。気合が入りすぎたがゆえに空回り、というか。何より心配なのは、いいときの彼を思えば、まるでプレーを楽しんでいるように見えなかったことである。

 1年前の日本であれば、久保が本調子でなくなるのは大問題だった。南野がいなくなるのも、伊東がいなくなるのも、チームの根幹を揺るがしかねない由々しき問題だった。

 だが、この日の日本からは、さらに冨安や守田の名前が消えていたにもかかわらず、その穴を感じさせられることはついぞなかった。

 断言してもいい。苦しかったアジア予選を乗り越えて、日本は強くなった。この日本ならば、韓国を一蹴したブラジルとも戦える。たぶん、パラグアイの選手たちも、そう思っている。(金子達仁氏=スポーツライター)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る