【コラム】金子達仁

地の利奪う「無観客」から早い脱却を

[ 2020年6月12日 11:00 ]

 無観客での再開となったブンデスリーガは、先週末までに5節を消化した。

 予想通りというべきか、予想以上というべきか。

 45試合中、ホームチームが勝利を収めたのが10試合(22・2%)。引き分けが14試合(31・1%)で、アウェーの勝ちが21試合(46・7%)だった。観客がいなくなればホームチームの優位性はかなり失われるとは予想していたが、まさか、アウェーチームの半分以下の勝率しか残せないとまでは想像していなかった。

 試合結果を改めて眺めてみると、残酷な現実が浮かび上がってくる。勝つのは、基本的に順位が上のチームか、状態のいいチーム。いわゆる番狂わせが激減した印象がある。

 強いチームはホームでもアウェーでも勝つが、弱いチームはアウェーはもちろん、ホームでも勝てなくなった。ホームチームの勝率がアウェーの半分以下というのは、そういうことなのだろう。

 火曜日の深夜に締め切られたが、JリーグやBリーグなど、ボールゲーム9競技団体による日本トップリーグ連携機構が、「#無観客試合を変えよう」というプロジェクトを行っていた。本来は懲罰的な意味合いのあった「無観客試合」という言葉に代わる、ネガティブではない新たな表現を募集したのである。

 転んでもタダではおきないというか、禍(わざわい)転じてというか、その発想の逞(たくま)しさ、斬新さには大いに感心させられた。ただ、どんな名称になるにせよ、競技によって「無観客」の及ぼす影響にはかなりの差異が出てくるのではないか。

 ボールゲームではないし、トップリーグ連携機構に参加している競技でもないが、たとえばボクシングの世界タイトルマッチなどは、観客の有無で内容はおろか、結果までも変わりそうな気がする。

 これはサッカーやラグビーにもいえることだが、ホームで戦う選手は、観客の声援によってチャンスをより大きく、ピンチをより小さく感じることができる。勝負どころでの大声援は、アドレナリンをかきたて、枯渇しかけたエネルギーに力を与えることもある。歴代の世界王者のほとんどが日本国内で王座を獲得していることからも、地元の有利さはわかる。

 つまり、肉体接触を伴う競技ほど、ホーム側の得るアドバンテージは大きい、とはいえまいか。

 考えてみれば、我らが阪神タイガースにとって、甲子園はかけがえのない聖地であり本拠地だが、甲子園での虎が獣王無敵かというと、残念ながらそうではない。甲子園だろうが東京ドームだろうが、西勇の制球力や近本の俊足に変わりはないし、2死満塁はどこの球場であっても2死満塁だからである。

 だとすると、サッカーの場合、野球よりも無観客からの脱却を急がなければならない。順位によって予想できてしまう結果の羅列が続けば、リーグとしての魅力は大幅に損なわれてしまうからだ。

 ちなみに、わたしが考えた「無観客試合」に代わる言葉は「スケルトン・マッチ」。ネガティブではないけれど、ポジティブでもない。透けてみえる観客席。でも、ネットなどで見えないお客さんが見守っている――。

 さて、いかが?(金子達仁氏=スポーツライター)

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