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【コラム】金子達仁

「強面」な表情もいいが次は再び「優雅」な顔を見たい

[ 2019年9月11日 15:40 ]

W杯アジア2次予選   ミャンマー 0-2 日本 ( 2019年9月10日    ヤンゴン )

<ミャンマー・日本>初戦に勝利し喜ぶ日本代表イレブン(撮影・篠原岳夫)
Photo By スポニチ

 先週、パラグアイと戦った際の日本はエレガントだった。優雅で、緻密で、大胆で。長いことサッカーをみてきたが、あれほど選手が楽しそうに連動する日本代表を見たのは初めてだった。

 だが、ミャンマーに乗り込んだ日本代表が見せたのは、また違った顔だった。一言でいえば「強面(こわもて)」。選手たちは自分たちの武器を放棄した状態で90分を戦い、それでも2ゴールと勝ち点3をゲットした。

 正直、内容はとても褒められたものではなかったが、かといって批判する気にもなれない。なぜ選手たちが美しいパス交換を封印し、パワープレーを多用したかといえば、グラウンド状態がそういうスタイルしか許さなかったから、だった。滑らそうとしても跳ね上がってしまい、届かそうとしても止まってしまうグラウンドでは、選手としては空中を使ってパスを届けるしかない。この日のコンディションでは、たとえバルサであっても、似たような戦いを余儀なくされたことだろう。

 ミャンマーの闘争心にも驚かされた。序盤から圧倒的な力の差を見せつけられ、かつ早い時間帯に2点を奪われても、彼らのテンションは0―0の状態とほとんど変わらなかった。かなわぬまでもせめて一太刀を浴びせようとし続けた姿勢は、称賛に値する。最終予選に進出する可能性はほぼゼロだろうが、このスタジアムではほとんどのチームが手を焼かされるに違いない。

 マンオブザマッチは…やはり先制点の持つ意味の大きさを考慮して中島か。レベルの高いGKであれば弾(はじ)かれていたシュートだったが、あのゴールが生まれたことで、試合の難易度は一気に下がった。値千金の一撃と言っていい。

 どんなチームにとっても予選の初戦の戦い方は難しい。そんな中で勝ち点3を獲得したのは素晴らしいことだが、いま日本代表の選手がやらなければならないのは、一刻も早くこの試合のイメージを頭の中から消去することだと思う。

 アジア杯を戦った際の日本は、自分たちのサッカーにアクセントを加えようとし、長いアバウトなボールを試合に組み込んだ。なるほど、最初は効果的で、相手も大いに戸惑ったようだったが、いつしか、アクセントのはずだった長いボールが日本の攻撃の主軸になりかけてしまった。ボール保持率で圧倒され、ただ勝っただけとしか言いようのないサウジ戦が、その象徴的な一戦だった。

 いざとなれば「強面」のサッカーもできるということを証明したこの日の日本だが、所詮(しょせん)は優男が急ごしらえで作った強面である。こういう面構えを得意としているチームにはかなわないし、また、日本としてはそこで勝負するべきでもない。

 幸いなことに、次のモンゴル戦まではしばらく時間がある。それぞれの所属クラブでのプレーが、ミャンマーの記憶を拭い去ってくれることだろう。次の試合では、またエレガントな日本がみられることを期待したい。

 予選は結果がすべてだというが、上を狙うチームには内容を伴った結果が求められる。今回の2次予選、力関係から考えても、日本は全勝かつ無失点がノルマだとわたしは思う。(金子達仁氏=スポーツライター)

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