【コラム】金子達仁

日本ラグビーの未来はW杯での勝利が鍵

[ 2019年9月5日 16:30 ]

 自国開催の世界大会で結果を残す。スポーツがその国に根付き、発展していく上で、これ以上効果的な結果はない。

 なぜ日本において、バスケットボールはバレーボールほどには人気を博することができなかったのか。「東洋の魔女」がいたかいないかの違いではないか、とわたしは思う。

 バレーとバスケ、2つの球技には、行われる場所、人数、選手に求められる資質など、共通するところがいくつもある。にもかかわらず、定期的にゴールデンタイムでの試合放送がある印象のバレーに比べ、バスケの試合に接することのできる機会はずいぶんと少なかった。世界におけるバスケの競技人口がサッカーの約1・8倍とされていることを考えると、これは相当に不思議なことである。

 だが、バレーには「東洋の魔女」がいたことを考えれば、その理由も見えてくる。55年前の日本人は、世界一になるニッポンをリアルタイムで目撃した。本来、試合時間が読めないバレーより、計算のできるバスケの方がテレビ局的には都合がよかったはずだが、五輪での金メダル獲得は、そんなハンデを吹き飛ばすほどの威力があったということなのだろう。

 考えてみれば、Jリーグの発足当時からつきまとっていた「サッカーは日本人に合わない」「いずれ潰(つぶ)れる」といった声が聞かれなくなったのは、02年のW杯日韓大会以降だった。

 あの大会でロシアとチュニジアを倒し、史上初の決勝トーナメント進出を果たしたことが、日本サッカーの未来への懸け橋となったのである。

 なんと危うい橋だったことか、といまとなっては思う。自国開催の大会で勝つことは多くの面において起爆剤となるが、そこでしくじるようなことがあれば、起爆剤は一転して消火剤となってしまうからだ。

 W杯日韓大会から8年後、大会史上初めてのアフリカ開催という栄誉を担った南アフリカは、大会史上初めて1次リーグで敗退するホストカントリーにもなってしまった。

 以来、彼らはW杯本大会への出場を果たせずにいる。日本より先にW杯への出場を果たし、日本より先に本大会での1勝をあげたアフリカの強国は、長い暗黒時代に突入してしまった。

 素晴らしいクスリにもなるが、猛毒にもなりうる。それが、自国開催のW杯というものらしい。9月20日からは、いよいよラグビーのW杯が始まる。前売りチケットの売れ行きは、過去の大会に比べても抜群にいいとのことなので、日本の津々浦々で多くの人が世界のラグビーを堪能することだろう。今後、ラグビーの人気、認知度が飛躍的に高まるのは間違いない。

 だが、日本ラグビーの未来を切り開くのは、やはり、日本代表の勝利しかない。国内リーグが多くの観衆で埋まり、選手の言葉や出来がニュースとなる国になっていくうえで、この大会での勝利は最高のきっかけとなるはずだ。

 言うまでもなく、今月からはサッカーのW杯アジア予選も始まる。サッカーとラグビー。とんでもなく忙しく、楽しい秋になりそうだ。(金子達仁氏=スポーツライター)

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