【コラム】金子達仁

「苦すぎる良薬」もう失敗は許されない

[ 2019年6月19日 16:40 ]

南米選手権・1次リーグC組   日本0―4チリ ( 2019年6月17日    サンパウロ )

後半、岡崎を交代選手として呼ぶ日本・森保監督(撮影・大塚 徹)
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 もしわたしが、チリ人でも日本人でもない、第三国の記者だったとしたら。きっと、こんなタイトルから記事は始まる。

 『期待外れ』

 「チリの出来もホメられたものではなかったが、日本があまりにも酷(ひど)すぎた。特に、3失点に絡んだボランチの1人にとっては、悪夢としかいいようのない1日だろう。日本はポゼッションを大切にするチームだと聞いていたが、最終ラインから組み立てる意志も能力もなかった。レアルに買われたという18歳も、才能の片鱗(へんりん)は見せたものの、メッシと比較するのは現時点では冗談でしかない――」

 初代表の選手が6人もいたことなど、第三者にとっては何の関係もない。初代表だから酷い出来でもかまわない、なんてこともない。残念ながら、この日代表デビューを飾った選手の中には、国によっては二度と招集されないこともありうる出来の選手もいた。

 だが、わたしは日本人で、外国人よりは日本の事情を知っている。だから、この試合に自分なりのタイトルをつけるとしたら、こんな感じになる。

 『苦すぎる良薬』

 おそらく、何人かの日本の選手は、自分に言い聞かせて試合に臨んだはずだ。気おされしちゃいけない、とか、普通にやればいいんだ、とか。気持ちはわかる。わかるのだが、「普通にやればいい」と考える精神状態は、もはや普通ではない。振り絞った勇気が無謀に、装おうとした平常心が消極性にすり変わってしまったのが、この日の日本だった。

 選手たちを責めることはできない。こういう試合で普段の力を発揮するためには、こういう試合を普段から経験していなければならない。過保護な親に育てられたお坊ちゃまに、いきなり海千山千の相手と伍(ご)していけというのは酷な話である。

 だが、お坊ちゃまとて修羅場の経験を重ねていけば戦士に変わる。森保監督が期待したのもそこではなかったか。

 正直、ボランチの一角を務めた中山の出来は最悪だった。それでも、森保監督は最後まで彼を交代させなかった。第三者から見れば無能な采配に映るかもしれないが、わたしは、中山という大型ボランチに対する森保監督の期待の大きさを見た気がした。

 ただし、中山も森保監督も、同じことの繰り返しは許されない。

 この惨敗は、南米における日本サッカーの評価を暴落させるだろう。それだけの代償を払って服用した良薬であれば、絶対に次に生かさなければならない。中山にはウルグアイ戦での汚名返上を誓ってほしいし、森保監督にはぜひとも彼を起用してもらいたいが、しかし、チャンスはそれが最後になる。これ以上、世界最古の大陸選手権を冒涜(ぼうとく)するわけにはいかない。

 0―4というスコアから、20年前のことを思い出す方もいるだろう。だが、スコアは同じであっても、何もできず、呆然(ぼうぜん)とするしかなかった20年前と、試合後の気分はまるで違う。我ながら信じがたいし、チリ人や第三国の人間には嘲笑されるかもしれないが、「勝てた試合だったし、次のウルグアイ戦が楽しみになってきた」というのが、偽らざるところなのだ。(金子達仁氏=スポーツライター)

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