【コラム】金子達仁

未来のJに望む「平成の非常識は令和の常識」

[ 2019年5月2日 05:30 ]

 平成という時代が幕を開けたとき、日本にプロ・サッカーリーグは存在しなかった。いつかはW杯に出場したい、と夢見る少年よりも、W杯になんか永遠に手が届くはずがない、と考える大人の方が多かった。ラグビーの人気はサッカーをはるかに凌駕(りょうが)し、プロ野球の世界は依然として巨人を中心に回っていた。九州や北海道に、プロ野球の熱狂はなかった。

 30年あれば、社会は大きく変わる。日本の場合は特に。そして、日本のスポーツの場合は特に、特に、特に。30年前の非常識は、現在の常識。この変化のスピードは、たぶん、世界中のあらゆる国と比較してもトップクラスに属するはずだ。

 とはいえ、大人になってからの成長速度は、子供ほどのものではない。そして、幸か不幸か、アジアには成長余地のたっぷり残った国々が数多くある。世界を驚愕(きょうがく)させるスピードで進化と成長を続けてきた日本のサッカーは、今後、自分たちと同じ、あるいは上回る勢いで伸びてくる挑戦者たちと対峙(たいじ)していかなければならない。

 サッカーにしろ経済にしろ、ドイツには、ブラジルには同じ地域のライバルに追いつかれ、追い抜かれたという経験はないが、日本は違う。すでに経済では経験し、いずれはサッカーでも経験するかもしれない。しかも、これからのアジア、ライバルは中国だけではないのだ。

 世界的に見ても稀(まれ)な進化と激化の時代に突入するアジア予選は、その対価として、ひょっとすると令和生まれのプロ選手が誕生するころには、それがかなわなかったとしても21世紀中に、日本に世界一のタイトルをもたらすことになるだろう。いまは想像もつかないが、アジアが世界のサッカーの中心地となる時代がやってくるのはほぼ間違いない。

 もちろん、その中心にはJリーグがあってほしい。

 発足当時のJリーグは、アジア最大にして世界第2位の経済力をバックにしていた。海外に憧れる日本選手は多かったが、日本円に惹(ひ)かれる外国人選手もまた多かった。リーグ自体のレベルはいまよりもずいぶんと低かったが、それでも、日本行きを決意する大物選手は少なくなかった。

 あれから四半世紀以上がたち、もはやJリーグは大物外国人選手をつれてきただけで勝てるリーグではなくなり、そこに優秀な外国人監督を加えても勝てないレベルに達したことが明らかになりつつある。にもかかわらず、日本からの選手流出には歯止めがかからず、“Jリーグ=欧州の下部リーグ”のような認識がいよいよ強まってきている。この流れを食い止めない限り、つまり日本でプレーしたいという選手を内外に増やしていかない限り、リーグのプレミアム感は失われていく。

 中国に抜かれたとはいえ、依然日本のGDPは世界3位。ドイツはもちろん、英国やスペイン、イタリアより経済力は上のはずなのだが、なぜか、Jリーグにはそれが反映されていない。

 では、反映していくためにはどうするべきか。

 令和が終わろうとしたとき、平成のころを思えば夢物語だなと笑うために、いまを生きる人間がやらなければならないことは、多い。(金子達仁氏=スポーツライター)

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