【コラム】金子達仁

お粗末な試合も感触は悪くない

[ 2019年1月10日 22:00 ]

アジア杯1次リーグF組   日本3―2トルクメニスタン ( 2019年1月9日    UAE・アブダビ )

<日本・トルクメニスタン>サポーターにあいさつをする日本代表(撮影・篠原岳夫)
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 お粗末な試合であったことは間違いない。失点に関しては特にそうだ。1点目は確かに素晴らしいシュートではあったものの、決まってしまった要因の半分はGK権田の油断にある。2点目もまたしかり。きっかけとなったのは北川のボールロストだったが、CBの2人はその可能性をまったく考慮していなかった。どちらの失点も、選手たちが張りつめた気持ちでプレーしていれば、問題なく防げたものだった。

 ただ、それも無理からぬところだな、とも思う。

 この大会をW杯に置き換えてみればよくわかる。日本はブラジルやドイツ、スペインに等しい存在で、目指すのはただ一つ、優勝しかない。そんなチームにとって、1次リーグの初戦、それも相当に格下の相手との一戦は、どうしたってモチベーションのあがらない試合になる。何しろ、先は長いのだ。こんなところで全力を出し切るわけにもいかない。

 ここまでのところ、韓国やオーストラリアが大苦戦を強いられているのも、日本がトルクメニスタンに手を焼いたのと同じ理由である。

 もっとも、そうした点を差し引いたとしても、この日の日本の出来はよくなかった。はっきり言ってしまえば、森保体制になってからダン然のワーストだった。あれほど滑らかだった連係がガタガタになってしまっていたのには、ちょっとしたショックすら受けた。次から次へと選手が湧いてくるようなサッカーは完全に影をひそめていたばかりか、単純なA↓Bのパスですら息が合わなくなってしまっていた。

 なぜこんなことになってしまったのか。察するに、一番大きかったのは選手個々によるテンション、モチベーションの違いだろう。昨年、ウルグアイと戦った時の日本はやりたいこと、めざしたいことがかなりのレベルで共有されていたが、トルクメニスタン相手ではそうもいかなかったようだ。

 よく、親善試合と公式戦は別物だと言われる。負けのリスクを考えず、理想と理想をぶつけあうのが親善試合だとしたら、公式戦で求められるのは何よりも結果だからである。

 だとすると、トルクメニスタンのリードで終わったこの日の前半は、親善試合の延長線で試合に臨んだ日本と、強敵相手に一泡吹かせるべく、徹底して日本を研究してきたトルクメニスタンとの“異種格闘技”だった。「きっと日本はこうしてくる」と待ち構える相手の中に、予想通りのスタイルで突っ込んでいき自滅したのが前半の日本だった。

 それでもわたしが評価したいのは、後半の日本が、選手を代えることなく試合をひっくり返したことである。おそらく、試合をみていた人の多くが乾の投入を望んだはずだが、それを初戦からやってしまうのは優勝候補の戦い方ではない。切り札を温存し、既存の選手たちが少しばかり「こんなことをされたら嫌がるかな?」という想像力を働かせた後半の戦いぶりは、日本サッカー全体の底上げを感じさせてくれた。

 お粗末だけれど、感触は悪くない。次のオマーン戦では、もう少しかみ合った日本を見せてくれるはずだ。(金子達仁氏=スポーツライター)

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