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【コラム】金子達仁

“彼”が入るならば 西野JAPANは面白い

[ 2018年4月13日 17:00 ]

20年東京五輪世代であるU―21日本代表の森保一監督
Photo By スポニチ

 細かいことを言えば、順番が逆だったかなという気はする。

 時間を必要とするチームづくりをしてきたが、どうも結果が出ない。ならば即効性、即興性に秀でたタイプの監督にすげ替える、というのならばわかる。たとえば、02年に韓国がヒディンクを呼んだように、である。

 だが、W杯を目前にして、構築に時間のかかるサッカーに切り替えるというのは、あまり例のあることではない。成功する可能性は決して高いものでないと覚悟しておく必要はある。

 とはいえ、ハリル監督を更迭した日本サッカー協会の決断を、わたしは高く評価したい。遅い?確かに。けれども、いつ解任したところで、同じ声は必ずあがっていただろう。洋の東西を問わず、ある人にとっては遅すぎ、ある人にとっては拙速に思えるのが任期途中での監督交代というものだ。

 ファンやメディアの中には、南アフリカでも前評判は最悪だったが結果を残した。だから……という声もあった。だが、その発想は、あのときは神風が吹いた、だから今回も、と考えるに等しいとわたしは思う。

 そもそも、南アフリカの日本代表は、チームとしての骨太の戦略はなかったものの、勝利への意欲や負けることへの危機感は、監督を含め、全員が強く持っていた。それが今回は……。神は自ら助くる者を助く、というが、ハリル監督のチームには天が助けてくれそうな気配すら感じられなかった。

 スタート地点の低さを考えれば、日本がロシアで成功を収める可能性は高くない。それでも、しらけムードすら漂っていたチームを放置しておくよりはよっぽどいい。協会もすっかりお役所と化し、前例踏襲を金科玉条とする組織に成り果てたかと思っていたが、どうやら思い過ごしだったようだ。

 後任に収まったのが前任者の上司的立場にある技術委員長だったことには、違和感を覚える人も多いだろう。選手としても監督としてもW杯の経験のない人物に日本を任せて大丈夫なのか、という声があがるのは当然だ。

 だが、ある一点の条件がクリアされるのであれば、わたしはこの人選、なかなかに面白いと思っている。

 一点とは、森保・五輪代表監督の入閣である。

 実を言えば、彼が日本代表の監督も兼任してしまう、というのがわたしの考えていた理想図だったのだが、もしW杯で惨敗を喫してしまうと、東京五輪を前に彼には大きな傷がついてしまうことになる。

 だが、責任をとる立場には西野監督がたち、森保が自由にやれる状況が作られるのであれば、そのリスクは大幅に減り、彼は世界最高峰の舞台での経験を積むことになる――。

 20年前、当時の岡田監督は日本サッカーの未来を考え、高校を卒業したばかりの小野をメンバーに加えた。おそらく、新体制も同じことをする。W杯後も日本で生きていく人間が監督になった以上、かなりの確率で。(金子達仁氏=スポーツライター)

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